エビチュ
7
飲み物を注文した後、暫くして翔さんがテーブルに並べた料理はイカメインだった。
「おぉ〜!旨そう〜!」
「ブロッコリーとイカをマヨ味噌であえてパセリを振りかけてみたの。でね、こっちがイカゲソをカレー粉で揚げてナンで包んで食べるの。」
料理の説明をする間、僕はこの場をどう切り抜けようか考えていた。
「さぁ、イケメン君達、たんと召し上がれ〜。」
「いただきまーす!」
みんなが手を合わせる中、僕は膝の上で拳を握った。
どうしょう…食べれない。てか、食べたらアタる。絶対、お腹、下す。来る前にイカイカ言ってたからフラグが立ったんだ。いや、あれは警告だったんだ。解ってたら帰って…いや、いや、帰ったら竜宮先輩の機嫌を損ねて最悪、来年まで試合に出してもらえないかも。
「芝、遠慮すんな。」
「これなんか美味しそうだよ?」
竜宮先輩とマコ先輩に勧められ、チラッと桜先輩を見たらガブガブ烏龍茶を飲んでいた。
「桜先輩、食べる前に飲むなんて変わってますね。」
嫌みっぽくないかな?と聞いた後に心配になった。
「習慣だ。」
「ハルは何時もご飯の前に水分を取るんだよ。はい、これ、ハルの分。」
桜先輩の前に料理を乗せた皿を置いた。マコ先輩って甲斐甲斐しいよな。特に桜先輩には。バスケは桜先輩がアシストするからそのお返しとか?
「何、羨ましそうに見てんだよ。俺もよそってやろうか?」
「そういうわけじゃ…」
言わなきゃ…じゃないと翔さんの気分を害するし和やかな雰囲気が悪くなる。
「その…イカは天敵で…体質に合わないとゆーか…アレルギーがあって…」
眼鏡のフレームを手で隠しながら小声で伝えたのは自分の弱みを教えたからだ。
「そりゃあ、食えないわな。翔さん、なんか他のもん作れないですか?」
「良いわよん。イカ臭い手は洗って作ってあげるわ。」
「イカ臭いって翔さんが言うと意味深ですよ。」
「あら、バレた?さっきシコシコしてたら出ちゃったのよぉ。」
そんなこと言われたら食べる気なくすんじゃ…。
マコ先輩と桜先輩に目をやると2人の箸は止まっていた。
「作りながらは扱くのは勘弁してくださいよ〜。」
な、何、言ってんだ!!?バっカじゃないの!?
「やっだぁ〜!もぅ!坊ちゃんたらぁ〜。あ、冗談だからね?これには入ってないからね?」
「は、はぃ。」
顔面をひきつらせるマコ先輩と料理を凝視する桜先輩に竜宮先輩は料理を食べることで安心させようとした。竜宮先輩って実は残念な人だったんだ。バスケの面では統率力も指導力も優れてるのに。なんかガッカリだな。僕の中で竜宮先輩のイメージが塗り替えられた瞬間だった。
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