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エビチュ

イカに気を取られていると突然、竜宮先輩が立ち止まった。

「此処だ。」

居酒屋翔GEKI?

てっきりファミレスだと思っていたから目を見張った。

「俺達、未成年だけど良いのかな?」

戸惑うマコ先輩に竜宮先輩は苦笑した。

「酒を呑むわけじゃないし大丈夫だ。旅館のお得意さんが経営してる居酒屋で新メニューの試食をして欲しいって頼まれたんだ。姫と亀を誘ったけど亀は親の用事で姫はコンクールが近いからって断られた。で、お前らを連れてきた。居酒屋でもメニューに力を入れてるらしいから鱈腹食おうぜ。」

店のドアを開け僕達を促した。

「じ、じゃ…」

マコ先輩に続いて店内に足を踏み入れた瞬間、唖然とした。紫色の壁紙、照明は怪しいステンドグラス、革張りソファー。居酒屋というよりクラブっぽいような…

「いらっしゃ〜あら、坊ちゃん!待ってたわよん。」

いきなり竜宮先輩に抱きつく筋肉質の男性はピチピチのTシャツを着て腕には刺青をしていた。

「ち、ちよっ、翔さん、く、苦しい…」

ぎゅぎゅ抱きしめられ竜宮先輩は痛みに顔面を歪めた。

こ、この人もしかして…

「やだ、私ったら、つい…ごめんなさいねぇ。」

竜宮先輩を解放すると頬に手を当てはにかんだ。

…や、やっぱり…ガテン系オネェだ。ということは…

「坊ちゃんのお友達、背が高くてイケメンねぇ。お名前、なんて言うの?」

今度はマコ先輩と桜先輩にベタベタ触り始めた。

「え、えっと…牡丹…真人です…」

マコ先輩はたじろぎながら距離を取ったけど桜先輩は動じず「桜遙斗」と答えた。鈍感なのか肝が据わっているのか解らないけど僕は御免だ。オネェの作る料理なんか食べたくないし食べれないしコッソリ退散しよ…

「芝くん、1人で帰ろうなんて狡いなぁ。」

「っ!?」

僕の両腕を握り、にっこり笑う竜宮先輩に僕は顔を顰めた。

「狡いのは先輩です。1人で来たくなかったからって僕等を道連れにして最低ですね。」

「何とでも言え。旅館も不景気で常連客の要望に応えなきゃならないんだよ。それにキャプテンが困ってたら助けるのが部員だろ?」

言い訳せずはっきり言うのは男らしいと思う。けど開き直るのは止めて欲しい。

「バスケを引き合いに出さないでください。不愉快です。」

「相変わらずキツいな。桜に心酔しててもそれじゃ仲良くなれないぜ?」

「なっ!?」

何故、それを…あっ!部活前に話してたのはこれか。

「俺に協力してくれたら俺も協力してやる。この場を凌いでくれたら予選に桜とお前をフルで出してやろう。」

予選フルって…

「メンバー入れ替えたいと思ってたし、試してみたいフォーメーションもあるし。どうだ?」

悪い顔してニヤリと笑う。くそっ…人の弱みにつけ込んで僕が屈すると思うなよ。

「桜と仲良くなれるチャンスだぞ。」

「っ!?」

確かに彼と練習する機会が増え話すキッカケが出来て親しくなれる。これはまたとないチャンスだ。

「解りました。但し、マコ先輩も一緒にお願いします。」

「牡丹も?」

「はい。僕は3人で練習も試合もやりたいので。」

「お前、欲張りだな。ま、良いけど。そのかわり最後まで居ろよ?」

「竜宮先輩こそ約束、守ってくださいよ?」

フレームを押し上げジト目で念を押すと竜宮先輩はウインクしてサムズアップした。この笑顔が胡散臭いと思うのは気のせいか?

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あきゅろす。
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