[携帯モード] [URL送信]

エビチュ
10完
「真人、芝の様子が変だ。あとを追い掛けたほうが良くないか?」

心配するハルに苦笑した。確かに彼のキャラじゃない。けど、それだけ切羽詰まってたんだ。ハルを引き留める為に。

「大丈夫だよ。芝くんはハルに憧れて入学したけど自分のことを見てくれそうになかったから悪態をついて関心を引こうとした。しかし、ハルと竜宮の話を聞いて焦りハルに勝負を挑んで勝ったら退部取り消し要求するつもりだったんだよ。」

「つまり、俺は芝に嫌われてなかったんだな?」

「うん。好かれてると思うよ。」

「…そうか。」

口元に笑みを浮かべるハルは嬉しそうだった。

「良かったね。これで辞めれなくなったよね?」

俺の問い掛けに緩んだ頬が元に戻ってしまった。けどあの芝くんが感情を剥き出しにしてハルにぶつかったんだ。俺だって負けてらんない。

「俺もハルと一緒にプレーしたい。限界突破出来るよう全面協力する。マーブルが気掛かりなら、毎日、ハルんちに寄って遊ぶ。だから…」

「気持ちは嬉しいがお前の負担になりたくない。」

「負担とか俺の為とか思わないで欲しいんだ。言っただろ?俺はハルが居ないと頑張れない。俺の相棒はハルだけなんだ。」

「…俺より芝の方が真人の役に立つ。」

まだそんなことを…どうして俺の気持ちが…あ、そうか。想いは口にしないと相手に伝わらないんだった。

ごくっ…

「ハ、ハル、俺は…」

一旦、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。そうしないと心臓が喉から飛び出して上手く伝えられないからだ。

「真人?」

「お、俺はハルのことが…」

「俺のことが?何だ?」

ジッと俺を見詰める黒目がちな瞳は光の加減で青黒く見える。俺の好きな目。意思が強くて曇りのない夜空のように澄んでいる。今は俺だけを捉えて離さないその瞳をもっと間近で見てみたくて無意識に顔を寄せた。

ゴチン!!

「い゛っ!?」

「う゛っ!?」

額に痛みが走り頭がクラクラした。

「〜〜っ!」

おでこを押さえるハルに俺は慌てふためいた。

「わわっ!!ハ、ハル!!」

告白するつもりが頭突きを食らわしてしまった。千載一遇のチャンスを…あ〜!!俺の馬鹿、馬鹿!!

「や…優しいお前が…其処まで…」

「へ?」

涙目で赤くなったおでこをさすりながら、ふっと笑った。

「2人共、らしくないことして…ったく…」

「ハル?」

「俺もらしくないことしなきゃ割に合わないよな?」

それって…

「ああ、そうだよ。芝くんも俺もハルが辞めたら暴れてやる。」

真面目に答えたのにハルは何故か笑い出した。

「な、何だよ?」

「いや…想像したら…可笑しくて…」

ハルに言われて俺も芝くんが暴れる姿を想像したら笑えた。告白は不発に終わったけどハルの心を変えることが出来て良かった。

「インハイ予選、頑張ろうね。」

満面の笑顔で言うとハルは照れくさそうに「真人、ありがとう。」と微笑んだ。久しぶりに俺に向けられた笑みは胸をときめかせた。今日は気持ちを伝えられなかったけど、この想いは変わらない。『好き』を態度と行動に表して少しずつ届けよう。願わくばハルが俺の気持ちを受け止めてくれることを祈りながら。


終わり。次回は芝視点です。



[*前へ]

10/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!