半妖・続








竜とは神獣、霊獣でもある。

決して人と交わる事のない生き物。

神秘で伝説上の生き物として讃えられている



その中でも竜達をまとめあげる竜がいる

それは四竜、または四海竜王と呼ばれている



蒼竜は東方、

白竜は西方、

赤竜は南方、

黒竜は北方に棲みついている四人の竜王である。





竜一族の過ちを犯す者には制裁を

竜一族の掟に反する者には制裁を

竜一族を裏切る者には制裁を




その掟の一部


"人間との交わりは禁止"

"混血を存在させない事"




しかし一族の中で密かに一人の混血児が存在していた

人間と竜の混血児



それは竜一族の中でなってはならないこと。



混血児の存在を知られ、

過ちを犯した両親は四竜に殺された



人間と交わった血の所為で追放され、

抹殺命が下されている



おかげで元同属から狙われる身になってしまった




人間と竜の混血、半妖

夜は竜、朝は人間。




あばら屋に身を顰め、怪我した足を舐めていた時



「人と神の臭い・・・」




一人と神がこちらに近づいて来る

声もぼそぼそと聞えてくる



「・・・・・・」




警戒して気配を断つ



両足も怪我して血が止まらない

妖力もさっきの同胞に狙われた時に殆ど使った



さぁどうしよう。



ここで殺されるのも一興。

逃げるのも一興。




「・・・・来た」




赤い狩衣を着てる少年と白い獣




「神将が一匹、人間が一人。

 面白い組み合わせだな」


「竜!?」




すぐに札と刀印を構える少年


夜が明けかけている所為か力が入らない



鱗も剥がれかけているし、妖力も落ちてきている

二本の手がカタカタ小刻みに震え始める




「ふふ、私は何もしないさ。

 ちょっとここで身を休めているだけだ


 もうすぐ夜が明ける。

 お前らはさっさと家に帰りな。

 家の者が心配するだろう」


「何言って・・・!」




少年は目を見張った

足を凝視する




「怪我・・・?」


「ん?ああ、元同胞とやり合った。

 何数日したら治るさ。


 ほら少年。私を祓うなら今のうちだよ。

 この通り何も出来ない。」




ケタケタ笑って伏せをする



「えーっと・・・悪い妖怪ではなさそう?」

「みたいだな。」


「悪い妖怪、か。

 妖怪というより神獣か霊獣の方が近いな。


 善い悪い、だったら・・・悪いな。

 元同胞を殺したりしているし・・・」




ちらりと少年は白い獣を見る

獣も少年を見る





「どうするや、昌浩。」


「んー、でもなんか良い妖怪みたいな感じがするし、

 車之輔や雑鬼達みたいな感じだし・・・」


「だよな。」




怪我している手を舐めながら獣を見た




「相談は終わったのか?」

「え?うん、一応・・・」

「ほう、その結果は?」

「悪さをしてないなら、祓わない・・・かな?」




数回瞬きをする

その後クツクツ笑って笑いを堪える




「そうか、少年。お前は優しいんだな。

 さてと、」




のそりと立ち上がり身震いをした

パラパラと鱗が落ちる




「じゃ、私はおさらばするよ。

 追っ手が来たみたいだ」


「追っ手・・・?」




直後無数の唸り声が聞えた




「私は追われの身でね。

 日々逃げ回っているのさ。



 ――半妖は禁忌だからな」




バサリと舞い上がり

少年と獣の間を通り抜け外に出る




「あ、ちょっ・・・!」




後を追おうとしたら様々な毛並みの竜が素通りして行った




「半妖、って?」


「人間と妖怪の混血だ。

 混血は禁忌とされ殺される。」


「じゃあの竜も・・・!」

「だろうな。」

「行くよ、もっくん!」




首をつかんで狼の後を追う




**********



もうすぐで夜明け

朱雀大路を妨げる竜の集団を見つけた。

何かを囲む様に集まっている




「オンアビラウンキャンシャラクタン!!」





一部の竜を吹き飛ばした

紅蓮は紅い蛇で焼き払う




「竜さっ・・・!!」




体中傷だらけで血が溢れ出ている

それも薄汚い衣一枚で倒れている




「紅蓮・・・人間だ・・・」

「さっきの竜と同じ臭いだ。」

「じゃ・・・!」




サァっと血の気がなくなるのを感じた



「・・・けほっ・・・」




少女は血を吐きむせ返る




「だ、大丈夫ですか?」

「少年は・・・あの時の・・・・・・っどうかしたか?」

「急いで治療するから!」




紅蓮に担がせて急いで家に戻った



**********




「むぅ・・・」




天井が見えて茵に寝かされていた

良い香りが漂い匂いに任せて簀子に出た



「ふむ・・・あの少年の匂いだ」





スンスンっと嗅ぎながらある部屋に入った




「あら?目が覚めたのね?」





可愛らしい少女が微笑んで立っていた



「竜さん!?」




その隣に少年と獣がいて驚いていた




「ここは少年の家か?」


「え?」

「当主がいない家など家ではないだろ。」

「あ、いや・・・俺の邸だけど・・・・・・」


「ではここの家の主は誰だ?

 挨拶に行かんと・・・」




なんとも礼儀を知っている半妖だった




「その必要は無いよ」

「む?」



年老いてるおじいさんが妻戸に立っていた




「お前が家主か?」

「わしは安倍晴明という。」


「私は竜一族の混血児、竜陽(りゅうび)という。

 そこの子に助けられた。


 見ての通り私は半妖だ。

 朝は人の姿になり、夜になると竜になる。


 あなたは大陰陽師安倍晴明だと解釈する。

 するとこの子どもは孫にあたいするものだな」


「そうじゃな。」


「今日は助けて貰い感謝する。

 その礼に何かしたい。」


「わしに言わんでも、あれに言いなさい。」




ケホケホ笑う晴明




「ではえっと・・・少年。」

「昌浩です。」


「そうか、昌浩か。

 お前に礼をしたい。何がいい?」


「礼!?別にそんな事しなくても・・・ッ!」




あたふた慌てる昌浩

落ち着く様に白いちっちゃい神将が言う




「落ち着け、昌浩。

 竜はお前に礼をしたいと言っている。

 その内容は何でもいいらしいぞ。

 この際式にしてやればいいんじゃねぇか?」


「・・・まぁ悪さもしないみたいだし、

 狙われてるっていうし・・・うん。

 竜陽はいい?」



頷いて忠誠のポーズを取る



お前の支配下になろう。

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あきゅろす。
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