短編小説 Promise for you? 気付いた時にはもう遅くて、 目の前に広がる光景に唖然。 ざわめきが聞こえた。 ああ、ああ、と、掠れた声が出た気がしたんだが、どうやら声には出ずに、心の中で消えてしまっていたようだ。 「…………、」 群がる人々はソレを見つめて騒然。 一体僕らに何があったの? (お前が、お前が、お前が、) お前が約束さえ破らなければ、こんなことにはならなかったんだ。 倒れてゆく君を目で追いかける時にはもう遅くて、 見つめる君に微笑まれて僕は呟く。 倒れゆく君は僕に届かぬ声で囁く。 お互いがお互いに、「ありがとう」と。 俺がお前に言った理由も、お前が俺に言った理由も、どうして言ったのか、全く分からない。 「ありがとう」と言えるなら、今こんなことにはなっていないはずなのに。 (お前が、お前が、お前が、) 伝わらないなんて、分かっていたんだ。 それでも何処かで通じ合う気がして、 君のことを信じて、結果失って。 (お前が、お前が、お前が、) 流すのは涙?それとも身体を駆け巡る、赤い液体? 「お前が…………っ!」 正気に戻れない気がしたのに、人間というヤツは意外と冷静で。 だけど気付いた時にはもう遅くて。 しかし、コイツはもう死ぬんだなと気付くには早すぎて。 気が付きたくなかったのに。 そんなことばかり、早く気付いてしまって。 ただただ倒れゆく君に、 僕は「ありがとう」と。 君もどうしてか、 僕に「ありがとう」と。 お互いがお互いに、交わし合ったんだ。 (お前が、お前が、お前が、) 全てお前が悪い、 お前が、お前が、お前が、 ああ、 そう、お前に伝えたいのにも関わらず、声にならないのは何故? 「………お前がっ、」 お前が、好きで。 お前が、俺を夢中にさせたから。 全部全部、お前のせいなんだ。 Promise for you? [*back][next#] [戻る] |