短編小説
Lonely me.
例えば“好き”という言葉を、言葉として君に伝えるとする。
それも、宇宙を泳ぐスペースシャトルから、地球に向かって届ける。
宇宙から地球まで、普通に暮らしている私なんかじゃ知らない単位の距離が離れている。
その距離は、光にしても、数年かかると聞く。
だから、そんな距離で“好き”なんて言ったって、君に届くわけがなくて。
声がスペースシャトルから外に、伝わるわけがないことも知っている。
その事は、今回は忘れて考えてもらいたい。
ただ言いたい事は、光の速度にしても数年かかるこの距離を、声でどうやって届ければいいんだっていう話。
何千も何万も、待ち続けろという事か?
自分じゃない、存在も確認出来ない子孫に託せという事か?
好きでも、届かない言葉が沢山ある。
死んでも尚、伝えきれない言葉は、数えきれないほど。
生きていても、様々な問題で伝える事の出来ない言葉は、星の数ほど。
愛しくてたまらない。
伝えきれない言葉が沢山ある、自分はこの言葉をどうすればいい?
…――アロー、聞こえますか?
只今、シャトル17号、宇宙を漂っています。
この声が聞こえるのは、いつだろう。
もし直ぐに聞こえたなら、返事が欲しい。
次に俺が言う言葉を、そのまま返して欲しい。
“好き”だと。
今夜はいい夜になるだろう。
おやすみ、君へ。
返事が来ない事を分かっていて、僕はスペースシャトルの中から地球に向けて送った。
君が僕に向かって言う“好き”が聞きたくて。
Lonely me.
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