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ギアス
貯金箱の妖精さん 2
貯金箱の妖精、スザクとの生活はなんの問題もなく続いている。が。
「…疲れた」
もともと体力がない俺には朝から学校へ行き、それから深夜までバイトという2重生活はきつかった。ハンバーガーショップと荷物の積み込みで、顔は笑顔でひきつるわ節々は悲鳴をあげるわのひどい状態になっていた。それでも…。
「おかえりルルーシュ!今日は頑張ってシチュー作ったよ!」
「ありがとう。道理でさっきからいいにおいがするはずだ。」
小さい体で毎日必死に晩ごはんをつくって待っていてくれているスザクに出迎えられるといつも疲れが吹き飛ぶ。
そして二人で一緒にごはんを食べて、今日一日であったこと、おもしろかったことなんかを話して。
そうやって過ごすスザクとの時間はこの一か月でかけがえのないものになっていた。
なぜこんなにもスザクといると安心できるのか?
そんな疑問も楽しい時間の中ではすぐに消えていった。
〜          〜
「38度5分・・・」
ベットに寝ている俺の横にいるスザクの怒ったような声が部屋に響く。
「なんでこんなに熱が上がるまで無理してたの!?」
スザクが怒るのも無理はなかった。
朝から頭痛がするのを我慢して学校へ行き、バイトにでて、倒れた。
ここまでバイト先の同僚が運んでくれたが、スザクにとても心配をかけてしまった。
「いきなり他人に運ばれてくるし!熱が出てるって言うし!…心配したんだからっ」
緑の大きな瞳に涙を浮かべたスザクを見ると、罪悪感ばかりがわいてくる。
「すまないスザク…。でも休んだら大変だと…」
「倒れたほうが大変だろ!?バカっ…」
ポロポロとこぼれおちる涙がベットに薄いシミを作っていく。
「ごめん…。ホントに、すまな…」
「無茶しないでよ…ルルーシュ」
スザクはスンと鼻をすすると泣くのをやめてキッと俺に向き直る。
「とにかく寝ててね!なんか作ってくるから」
スザクはそう言うと開けっ放しになっている扉からトコトコと部屋を出て行った。
スザクの気配が遠ざかると同時に眠気が襲って来て、俺はそのまま眠りにつく。
〜          〜
「…シュ。ルルーシュ。」
遠くからスザクの声が聞こえる。ふわふわとした感覚が俺の体を包んでいる。
「大丈夫?」
頭に誰かの手が触れる。不思議だった。手の大きさが俺と同じくらいある。
誰だろうと思って目を開けると、ベットの横には少年が座っていた。年も背格好も俺と同じくらいの少年。
だが茶色のくせっ毛、深い緑の瞳、顔立ち、声、すでてがスザクだった。
「スザク?なぜ…その姿…」
「あ?これは……で…」
熱のせいか話すことも聞くこともうまくできない。
スザクが何かを話しているのによく聞こえなかった。
それにしてもなぜスザクが元の大きさに戻っているのだろう?俺はまだ一億ブリポンためてはいないのに。
もしかして夢?だろうか。
「ルルーシュ?」
夢なら説明がつく。スザクが元の大きさに戻っていることは別におかしくはない。
「聞いてる?…大丈夫かい?」
ぼうっとスザクを見つめているとこの前の疑問の答えがふっと浮かんできた。
なぜこんなにもスザクといると安心するのだろう?
好きだから。スザクが好きだから。
「つっ・・・」
気がつくとなんて簡単なことだろう?好き。ただそれだけのこと。でも大切な気持ち。
手を伸ばせばその頬に触れることができる。柔らかくて、さらりとしていて。すごくリアルな夢だと思う。
夢なら、覚めて消えてしまう夢なら、少しだけでいい、触れて見たい。
そう思ったら自分を止められなかった。上半身を起こし、スザクの両頬を包み込む。
「なに…?」
ほんの少し首を傾げるスザク。そんな仕草さえ愛おしい。俺はいつの間にかこんなにも…。
「好きだ」
「えっ?」
驚きの言葉を紡いだ唇を、自分のそれで塞ぐ。本当に軽い、触れるだけの、キス。
「やっ…だ!」
スザクに力いっぱい押せれて、壁に頭をぶつける。頭痛と衝撃が一緒になって俺を襲う。
でもその衝撃で一気に目が覚めた。浮遊感ももうない
。感覚が現実に戻ってきた。そして現実に、人間サイズのスザクがいる。
「な…んで」
見るとスザクは涙くんでいて、急いでこの状況を説明しようと言葉を紡ぐ。
「すまないスザク!…その、間違って…」
「間違い…?」
その言葉を口にした瞬間、スザクの瞳が大きく揺らいだ。涙が頬を伝って流れおちる。
「誰と…間違ってるか知らないけどっ…酷いよ」
「ちがっ…!待ってくれスザク!」
否定の言葉を聞こうともせずに立ち去ろうとするスザクの手をつかむが、思いっきり振り払われた。
部屋を飛び出して、リビングのほうへとかけていくスザクを追いかけようとするが、熱で参った体はなかなか動いてはくれなかった。
それでも必死に体を動かしてリビングへ向かうと、スザクは部屋の奥で声を押し殺して泣いていた。
「うっ…つっ…」
ゆっくりと刺激しないように近づいて、そっと、抱き締める。
「!ルルーシュ」
「頼むから、俺の話を聞いてくれ。スザク」
「う…ん」
その一言を返して黙り込むスザクに、今度は誤解させないように慎重に言葉を選んで話しかける。
「さっきの間違ったって言ったのは、夢と現実を間違ったっていう意味で、お前と誰かを間違えたんじゃないんだ。いきなり目の前に人間サイズのお前がいるなんて、驚いて夢だと思ってもしょうがないだろ?」
「これはお金がたまってきたころに一回だけ使えるもので、少しの間だけ元に戻れるんだって…。さっき言ったのに。」
「熱と寝起きで良く聞こえなかったんだ」
誤解が解けていく。よくよく考えれば聞こえなかったときに尋ねればよかっただけの話だった。
「でもそれじゃ…好きって言うのは。それに…キス、は…」
「あれは!…本当に、その。お前が好きで…」
「えっ?」
スザクは身をよじり、腕の中で振り向く。すると身長がほぼ同じのためにあと数センチでキス、という顔の距離だった。
「あっ…ご、ごめ」
あわてて腕から抜けだそうとして俺を押してくるスザクを力一杯抱きしめる。
「好きだ、スザク。お前のことが」
「ル…ルーシュ」
スザクの頭が俺の肩にうずめられる。
「スザク?」
じんわりと肩が濡れてくる。スザクはまた泣き出していた。
「いや…だったか?」
「ううん、違うよ。うれしくてっ…」
「なら…」
「うん。僕も…好き、だよ。ルルーシュ」
恥ずかしがりながらも気持ちを伝えてくれたスザクに胸が高鳴る。そしてどうしても衝動が抑えられなくなった。
「スザク…もう一度、キスしていいか?」
「え…あっ…」
スザクの顎を持ち上げて、顔を近づける。スザクの瞼はギュッ閉じられた。唇が触れあうまで、あと、少し…。
ポンッ!
「は?」
「ふえっ?」
音と煙が出ると同時に抱きしめていたスザクの感覚が消える。まさかとは思ったが、お約束のようにミニマムサイズに戻ったスザクが床にいた。
「時間切れ…見たい」
「そうみたい、だな」
どうしたらいいのかわからない空気が流れる。スザクと目を合わすと、どちらからともなく苦笑してしまった。
「かっこ悪いね、僕たち」
「そうだな。ムードが台無しだ」
スザクを手に乗せて同じ目線で話すとさっきまでのスザクが本当に夢のように感じてしまう。
「でもびっくりした。もう一度…キスしたいなんて」
「当然だろ?好きなんだから」
「つっ…」
好きだというと、スザクの頬がみるみる真っ赤に染まっていく。そして恥ずかしそうに聞いてくる。
「ルルーシュって…どうしてそう…手慣れてるの?どうせ今まで何人もたらしこんだんだろうね…」
「まさか。お前が初めてだ。本当に」
そう告げると、スザクの頬はさっきよりも赤く染まる。そして小さい声で、こう返してきた。
「言っとくけど、僕だって…初めてだからね」
「…ありがとう、スザク」
熱があるにも関わらず、ベットから抜けて動き回っていたことで、その後風邪をこじらせて寝込んだのは言うまでもない。

あとがき

なんかますます方向性がわからない展開になってきました(^_^;)
しかも1からかな〜り時間がたってしまったし
3はもっと速いペースで、できれば今週中にアップできたらいいなと思ってます!
そして迷走しないといいなとも思う…

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