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ギアス
騎士
「ルルーシュはユフィの仇・・・。」
「だから?。」
ラグナレクの接続を阻止し、父であるブリタニア皇帝を倒した。そしてその場には俺と、スザク、そしてC.Cが残っていた。
 枢木神社での裏切るような別れのあとでは、もうスザクと理解しあえるとは思っていなかった。それに俺も、スザクの質問にすべて嘘で返した。さっき自分で人間は嘘をつくものだといっておきながら、俺はスザクに嘘をついたことが怖かった。
「だから、俺を殺すか?スザク・・・。」
「いや、皇帝陛下の策略を否定し、世界をここまで乱した君には何かを成し遂げてもらわないといけない。それに・・・。」
 スザクは俺に突きつけていた剣を下げ、そのまま床に落とした。カランと金属質の音を立てて、剣が落ちる。
「僕は君を、殺せない・・・。」
「スザク・・・。」
深い緑色の瞳が真っ直ぐとこちらを見つめていた。その目からは、さっきまでの張り詰めた怒りのような感情は消えていた。
「1年前だって、殺そうと思った。今だって、枢木神社で君が反省していなかったら殺すつもりだった。でもっ・・・。」
 その大きな瞳に涙を浮かべたスザクは、顔を見られたくないのかうつむいて耐えるように手を握り締めている。
「でも、殺したいって気持ちより、君のコトがスキって、いつでもきづかされて・・・。」
パタッと音を立てて、涙が床に落ちるが、乾ききった床に吸い込まれる様に消えていった。でも消えてすぐにまた涙が落ちては消える。それを繰り返していた。だが決してスザクは泣き崩れることはなかった。でもそれが逆にそれが俺の心を締め付けた。
「ユフィを殺したのにっ・・・。シャーリーもっ・・巻き込まれてっ。でもっ!。それでも殺せないんだ、ルルーシュ。」
もう一度顔を上げてこっちを見つめるスザク。涙のために潤んだ瞳や濡れた頬。耐えるために歪められた顔を見たら、もう我を忘れて、スザクを掻き抱いた。
「スザクッ・・・すまない。」
「ルルッ、シュ。」
目じりにたまった涙を舐めとって、そのまま頬につたう筋にやわらかく唇を落とした。反対側も同じようにしていると、ふいにスザクと目があった。ほんの少しの沈黙の後、スザクの目が閉じられるように細められた。その動きにつられるように顔を近づけて、震えていたスザクの唇にキスをした。
「んっ・・・ふぁ。」
啄ばむように口付けると、スザクの口から甘い声がこぼれる。スザクの手がすがるようにギュッとしがみついてくる。俺もスザクの身体を抱きしめ返した。だが決してキスは深くせず、あやすような軽いものをくり返した。気づけばC.Cは座っていた場所から姿を消していたあの女にしては珍しく気を利かせたのかもしれない。
「んあっ・・・・はぁ。」
「泣き止んだな・・・。」
唇をはなすと、スザクの涙は止まっていた。しかしまだ瞳には悲しげな色が浮かんでいる。それが俺のためだと思うと、酷く心が痛んだ。
「スザク、本当にすまない。でも本当にお前を愛してる。」
「つっ・・・。」
今さらなにを言っても真実を受け入れてくれないかもしれない・・・。でもっこでまたすれ違ったら二度と心が通じない。そんな気がした。
「・・・この前、枢木神社でお前の質問に答えたこと。あれは、全部・・・その。」
「嘘・・・なんだろ?。」
「えっ?。」
スザクの一言にドキリと驚いた。枢木神社でのスザクの行動から考えると、俺の言葉を鵜呑みにしていると思ったからだ。
「普通ならだまされてるよ・・・。でも、あのときの君、つらそうだった。似ていたんだ、父さんを殺したときの俺に・・・。」
「それでもお前は俺を捕らえたのか・・・。」
ついポロリと本音がこぼれ出た。本当はほかにかけたい言葉があったのに、やはりこの事が心に引っかかっていた。
「あれは本当に違うんだ・・・。服に盗聴器がしこまれていて。確認しなかった僕が悪いんだ。でもっ・・・!。」
「スザク・・・。」
「信じてほしい、ルルーシュ。」
不安に満ちた顔。相手の誤解を解くことができるのか、受け入れられるのか・・・。そういう不安が表れた顔だった。この顔でわかる、スザクは嘘をついていない。
「信じるよ、スザク。俺は、お前を信じる。」
「よかった・・・信じて、もらえてっ・・・。」
スザクは『裏切りの枢木スザク』とよばれていた。日本人を裏切り、命令に背き、フレイヤを撃って・・・。そしてここへもいろいろな物を裏切ってきたはずだ。そして、ユフィの騎士であったがばかりに、日本人からの風当たりをさらに強くしてしまった。全部、俺のせいだ。俺のギアスのせいで・・・。
「俺のせい、だな。お前にこんな思いを抱かせてしまったのも、大切な人たちを失わさせてしまったのも全部。」
「でも、僕にはまだ君がいる。1番、大切な、君が。」
キュッと背中に手を回され、抱きつかれる。スザクの頭が肩の上に乗って風を起こし、それに乗って柔らかい香りが運ばれてくる。
「ルルーシュ、今度はキチンと答えてほしいんだ。僕を助けてくれたのはなんで?。」
「お前に死んでほしくなかったからだ・・・。」
「僕にギアスをかけたのは?。」
「お前を愛していたから・・・・。生きていてほしかったんだ。」
初めてスザクに本当の気持ちを打ち明けられた気がする。告白をした時もそう感じたけど、今は、本当に全部をさらけ出して言えた。その事で胸からこみあげるものを止められなくなった。
「・・・ルルーシュ。泣いてるの?。」
「すまない・・・。愛してる、スザク。」
「うん、僕も愛してる。だから・・・・僕の前では我慢しないで・・・。」
その言葉を皮切りにこらえていた涙が一気にあふれだした。スザクの体を力いっぱい抱きしめて、肩に顔をうずめる。この涙は悲しみから来る涙なのか、嬉しさから来る涙なのか。新宿でスザクと再会し、C.Cからギアスをもらいゼロになったあの日。あの日からのつらかったこと、悲しかったこと、いろんな事が駆け巡る。でもその時とは違う、一番欲しかったぬくもりが、スザクがそばにいる。それだけで心が支えられる、そんな気がした。
「ありがとう、スザク。」
「うん。」
でもここで立ち止まるわけにはいかない。俺は明日を望んだのだから。何もしなければ何も変わらない。新たなブリタニア皇帝が立ち、シュナイゼルが陰で操る。そして完全なる世界支配をおこない始めるだろう。だから・・・。
「スザク、頼みがある。」
「ルルーシュ?。」
抱きしめていた体をはなして、真っ直ぐ深緑の瞳を見つめる。俺の心を伝えるために。
「俺は、ブリタニア皇帝になる。」
「えっ?。」
「俺は、明日を望んだ。その明日のために、そして今までしてきてしまったことを償うために、皇帝にならなければならない。」
「・・・・・・。」
スザクの表情が不安や理解ができないという感情を訴えてくるが、かまわず続けた。
「ブリタニアの皇帝になって、世界を手に入れる。そして・・・優しい世界にしてみせる。」
「ルルーシュ・・・。」
「スザク、お前には、俺の騎士になってほしい。」
「・・・イエス、ユアマジェスティ。」
右の拳を胸に当て、ピシィッと背筋を伸ばすスザク。そこに、強く美しい騎士が立っていた。
「本当にいいのか?スザク・・・。お前もいろいろ言われるぞ?。」
「今さらだよ・・・。それに。」
腕を下ろし、ゆっくりと、少し儚げに、スザクは微笑んだ。
「君さえ、僕のことを分かってくれれば・・・。何を言われても大丈夫。それに、ナイトオブワンにしてくれるんだろ?。」
「いや、お前にはナイトオブゼロになってもらう。」
「ナイトオブゼロ・・・?」
直訳すればゼロの騎士。でも1よりも上位を示すにはゼロを使うしかない。幸いスザクも誤解をせずに受け取ってくれたみたいだった。
「つまり、ナイトオブワンよりも上の存在・・・なんだね?。」
「そうだ、他にも色々な権利を持たせようと思ってる。」
「・・・でも、領地とかそんなの、もうどうでもいいかな。・・・僕の望みは、君の傍で君を守る。今はもう、それだけだよ。」
「スザク・・・。」
「それにしてもナイトオブゼロか・・・。ゼロの騎士、なんかルルーシュ専用みたいな感じだね・・・・。」
それは俺も考えていた。俺専用という意味では少し違うけど・・・。
「そういう意味も込めてみた。スザク、混乱が覚めたら、結婚してほしい。」
俺の声がこの広い空間に響いていく。スザクは信じられないという表情で俺を見つめている。もともと顔に表情が出やすいのに、今は余計にだった。
「僕たち男同士だよ?。」
「法律を変える。」
「皇帝になるんだろ?。」
「誰一人として娶ったりしない。」
「後継ぎは?どうするんだよ・・・。」
「養子をもらえばいい。反対はさせない。」
「・・・でも。」
「スザク。」
声に反応してビクリと体を震わすスザクを抱きしめる。逃げられないように後ろ頭に手をまわして、唇にさっきとは違う深いキスをする。
「ンンッ・・・ルルッ・・・。」
口腔内を探り、声を上げる場所をくすぐって、舌を絡ませ合う。頑ななスザクを解きほぐすようにゆっくりと、愛が伝わるように優しく。
「ンっ・・・あっ。」
最後に優しく啄んでから唇を離す。そしてスッと耳元へ口を近づけてささやく。
「俺と結婚するのはイヤか?。」
「イヤじゃ・・・ない。」
かすかにかすれた消え入りそうな声。それさえも愛おしい。
「俺はもう、他の誰も愛せない。お前しか、欲しくない・・・。」
「僕も・・・君だけが好き、だよ。ルルーシュ。」
もう一度、強く抱きしめあう。二人の間にもう隙間ができないように。そうしてお互いのぬくもりを確かめ合っていると・・・。
「お前たち、いつまでそうしているつもりだ?。」
『C.C!』
一番ちかくの柱にもたれかかるようにして、C.Cが立っていた。
「お前、何処かへ行ってたんじゃ。」
「いってたさ、邪魔するのは性に合わないからな。」
今思いっきり邪魔しただろ、と内心思いつつも、C.Cに尋ねる。
「神根島の扉は壊したが、外へ出られるところはあるのか?何処に出られる?アーカーシャの剣以外のシステムはつかえるのか?。」
「一度に尋ねるな。いいか、私の“コード”があれば外へ出られるし、システムも使える。」
「そうか・・・。」
条件はほぼクリアか。あとは外の様子だけだが。でも、これからまた新たな道が、修羅の道が始まる。
「ルルーシュ。」
「ん?。」
スザクは床に落ちていた剣を拾い上げると、俺にしっかりとそれを握らせた。そして跪いて、俺が持っている剣の先を自分の胸に向くようにした。
「我、この身を剣とし、この命を賭して戦い、我、この身を盾とし、この命の限りあなたを守ります・・・。」
「スザク・・・。」
それは誓いの言葉だった。その昔、カエサル王、さらにはアーサー王の時代から続く騎士の言葉。スザクは今ここで、自分を騎士にしてほしいのだろう。
「汝、枢木スザクを、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが騎士に。」
剣を眼前に構え、そしてそれから、スザクの左肩、右肩、そして胸へと向ける。肩を切られれば腕が使えないから戦えない。そして心臓は命と心、その二つをつかさどる場所。その場所へ剣を向けられても良しとするは、忠誠の証。
「イエス、ユアマジェスティ。・・・永遠の忠誠と、愛を君に。」
「俺もお前に誓おう。永遠の信頼と、愛を。」
共に修羅の道へ・・。たとえ、死が二人を別とうとも、この愛だけは、永遠に。
End

あとがき

これは21話観終わった瞬間に思いついたものです。
「わが騎士枢木スザクだ。」が、
「わが妃枢木スザクだ。」にしか聞こえなくってww


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