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ONE
3
入れてもらったお茶と、俺が持って来たカツサンドで小さなテーブルを囲んだ。
隆哉は、いつも通りものすごい速さで一気に平らげ、指についたソースまで美味そうに舐め取ると、二つ目の箱へと手をのばす。
霧島兄弟の大好物は、多めに買ってきて正解だったようだ。
朔弥くんもきっといつものように2個は余裕で完食するだろう。
柊ちゃんはどうかな?

「もしかして、あまり好きじゃなかった?」

食が進んでいない様子が心配になり声をかけると、柊ちゃんはブンブンと一生懸命首を振った。

「あのっ!すごく美味しいです!!」

緊張がはっきり伝わる力の入りすぎた声で答え、小さい口に一生懸命詰め込む姿に、キュンとしてしまう。

「それならよかった。」

無理しないでねと付け加えると、コクンと頷く柊ちゃん。
俺も隆哉ももうすっかりメロメロだ。
弟の敬吾も、その恋人の夏樹くんも、もちろん朔弥くんだって俺にとっては可愛いんだけど、それとはまた別の可愛さが柊ちゃんにはある。
もう、抱きしめてギュッてしたい!!

「コイツ普段からあんま食わないんですけど、もっと食うようにさせるにはどうしたら良いですか?」

デレッとしていると、朔弥くんから意外にも真剣な相談を持ち掛けられ、ハッと我に返った。
いくら兄の恋人として受け入れられているからと言っても、相談された事自体これが初めてかもしれない。
隆哉は、朔弥くんが俺のことだけは認めてくれてると言ってくれたけど、実際にそれを感じたことは今までなかった。
頼られた喜びをじわり噛みしめながらも、医師という肩書がある以上、可愛い弟たちのために、真剣にその問題と向き合わなければ。
食生活はもちろん、家族構成や、生活環境など大まかに2人から聞いた感じだと、どうやら柊ちゃんは胸の奥に大きな問題を抱えているように思えた。
この小さな身体と心で、一体どれだけ辛い出来事を受け止めて来たのだろう?
一見して大人しい性格という彼のイメージは、必死で自分を守ろうとする心の防御からなのだろうとついつい職業柄推測してしまう。

「ゆっくり少しづ増やすようにしよう。あまり気にせず無理はしないでね。朔弥くんも、いいかい?」

「はい。」

「もし、どこか具合が悪かったり、心配な事があったら遠慮せずにいつでも連絡してね。」
名刺に自分の携帯番号を書いて渡すと、柊ちゃんは嬉しそうにジーッとしばらく眺め、それを朔弥くんが温かい視線で見つめている。
そんな優しい瞳をするなんて、朔弥くん変わったな。
中学生の頃は、もっとギラギラしてて鋭い感じだったけど、今は落ち着いて雰囲気が柔らかくなった。
やっぱり柊ちゃんがそうさせているんだろう。
まだ高校生なのに、お互い必要な存在だとすでに理解している2人に驚きと共に少し切なさを感じた。
同じ歳頃の自分は、まだ恋すらしていなかったし、未来の自分が同性と付き合うなんて考えもしなかった。
二人に自分達を重ね、俺は隆哉と出会った頃を思い出していた。

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