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その後も重森とは、何度も利用する関係が続いた。
報われない寂しさを満たすように、それは身代わりとして、傷を舐めあうような行為だった。
何度身体を重ねても、満たされたと錯覚するのはほんの一瞬で、最近では違和感を感じている…。

今までとは違った寂しさを…。


それでもこうする事でしか、心の均衡を保っていられない。
それは俺も重森も同じだ。
だから求められればその一瞬の為に、俺は重森を受け入れ、重森も俺に触れるんだ。


「俺らって、幸せになれるんかね?」

互いを慰めあった後、二人で裸のままベットに横になっていると、ぽつりと重森が口にした。

「…さぁ、どうだろう。」

つぶやくような言葉に曖昧な返事を返した。
そしてふと考える。
俺の幸せって…一体何だろう…?



松島さんの家庭が壊れる事?
ずっと一緒にいられる事?



違う…。

今まで望んでいたはずの未来が、今はどうしても心の中に描けない。
じゃあ、俺が望む幸せって…?


「重森が望む幸せって…何?」

「…やっぱ、あの人を俺だけのモノにする事…、かな?」

その答えに落胆する自分がいる…。
ざわつく心を抑えるように、ギュッと毛布を掴んだ。
重森に触れられる時、俺は松島さんじゃなくて…いつの間にか、目の前の重森を見ていたんだ。
俺は、…重森の事が好き…なんだ。
松島さんを忘れるくらいに…。
自覚した想いを封印するかのように、携帯の着信音が現実へ引き戻す。


持ち主である重森がそれに手を伸ばし、画面の文字で相手を確認すると、一瞬表情がこわばった。

「…はい、こんな時間にどうしたの?うん、…分かった。今から行くよ。」

電話を切り、重森は慌てた様子でさっきまで着ていた自分の服を床から広い集める。
俺は重森の様子を、ただじっと見つめていた。

「悪い!俺、行かなきゃ。」


「…うん。」

行かないで欲しい。

そう言ってしまいそうで微かに頷くのが精一杯だった。


「本当にごめんな!鍵はポストに入れといて。後は好きに使ってくれていいから。」

俺の頭を優しく撫でて、慌しくズボンを履き、シャツのボタンを閉めながら、重森が部屋から出て行く。
重森の部屋なのに、彼がいない。
残されたのは微かな温もりと、裸のままベットに横たわる俺。
そのまま彼の枕に顔を埋めた。
ほのかに残る、あの甘い香り。
前に彼女と同じ香水だと言ってたのを思い出す。


『これ、洋子さんと一緒に買ったんだ!俺と離れている時も俺の事思い出してくれるのかな?』


そう言って、少しテレた重森の顔が浮かび、涙が溢れて、胸が締め付けられるように苦しかった。

「…こんなハズじゃ、なかったのに。」

重森を想う。

愛する人を奪われる感覚、…苦しくて、切なくて…痛い。
今更になって松島さんの奥さんに申し訳なく思った。
もちろんそれは、俺の勝手な想いにしか過ぎない。

「何で…かな…?」

ただ自分が愛した人に愛されたい…それだけなのに。
どうしてこんなにもそれが叶わない相手ばかり好きになってしまうんだろう。
俺は、もう恋なんてしない方が良いのかもしれない。


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