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7
白い光を感じて、まだ少し重い瞼を開ける。
もうそこには愛する人の姿はなく、残されていたのは数時間前に書いたであろうメモだけ。

『また、連絡する。』

この瞬間が、一番寂しい。
気を失うまで何度もカラダを繋げ、いつもあの人の帰る背中を見送れない。
例え一瞬だけでも、去って行く後ろ姿で良いから、この目に焼き付けて、次会えるまでの糧にしたいのにそれすら許されず、一緒に過ごせるほんの僅かな時間が過ぎれば、次の約束もしないまま広すぎる部屋に一人きりで残されてしまう。

もっといろんな事を話したいのに、思っている半分も話せなくていつも後悔している俺を、あの人は知っているだろうか?

少しでも松島さんを感じたくて、彼が使った枕をギュッと抱き寄せる。
顔を埋めて、微かに残る彼の香りを探るようにおもいっきり吸い込んだ。
それでも松島さんがここにいたという実感が持てない。
結局…松島さんと会ってしてる事といえば、必要最低限の会話とセックスだけだ。
それが終われば松島さんは俺の隣りで眠る事なく、奥さんの元へと帰ってしまう。
あの人に俺が求められるモノは、それだけ。
なのに俺は、…いつからこんなに欲張りになったんだろう。



寂しい…。


寂しくて、寂しくて、心が引き裂かれそうな程痛くて苦しくて、気が狂いそうだ。


誰かに…側にいて欲しい…。


松島さんに会えば自分が感じてた不安も、罪悪感も全て消えるのかと思っていたけど、そうじゃなかった。
実際はその逆で、今まで無視し続けてきた現実を思い知らされた…そんな感じだ。
知らぬ間にどんどん涙が溢れてきて、枕に顔を埋めていると、暗闇にふと重森の顔が浮かぶ。

「しげ…もり…」

重森なら、…この気持ち分かってくれるかな?

昨日アイツが言っていた『利用』という言葉が、都合良く頭に浮かび、それはずぐに心の中まで侵食する。
重森を知ってしまった俺は、寂しさの紛らわせ方なんて完璧に見失っていた。


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