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松島さんに会えたのは、その日の夕方。
あれから重森の事は考えなかった。
今更過去を変えられるわけじゃないし、考えても仕方ないと開き直る事が出来たから。

待ち合わせ場所の駅へたどり着くと、すぐに混雑する人並みの中から松島さんを見つけ、彼も俺に気付いて手を挙げた。
それに手を振り答える間、いつもと違う感情が入り混じり、嬉しいより後ろめい。
顔に出ないよう作り笑顔でそれを隠した。
仕事帰りでもピシッと着崩れしていない綺麗なスーツ姿に、何度会っても緊張してしまう。

「待った?」

「俺も今着きました。」

「良かった、じゃあ行こうか?」

松島さんに会うのは2週間ぶりで、最近こういうペースが続いているせいか、2年近く経ってもいまだにドキドキしてしまう。
彼の仕事や家庭の都合もあって、会えない日々が続くのはいつもの事だけど、それでも俺とは時間を作って会ってくれる。
それが嬉しくて溜まらないから、どんなに寂しくてもその日を待ちわびてしまう。
そう思わせるこの人は、やっぱりズルイ人なんだと思う。
ひと回りも年齢が離れ、紳士的でスマートな大人の松島さんと、こんなどこにでも居そうな平凡丸出しの子供の俺とじゃどう考えても不釣合いなのに、どうして彼は俺に付き合ってくれているんだろう。
一度聞いてみたいだけど、答えを聞くのが何となく怖い。
多分それを聞くのは、この関係が終わる時じゃないかと何となく思った。

いつも一緒に過ごす場所は決まってホテルの一室で、それも1泊何万もする部屋を用意してくれる。
今日も例外ではなく、真っ直ぐこの部屋へと辿り着いた。
全て金銭的な事は松島さん持ちで、心苦しく思った俺がもっと安い場所でも良いと申し出たとき、『これでも、年齢のわりには稼いでるんだよ。』と笑顔で返されてしまった。
泊まるのはいつも俺だけなんだし、会えるなら安くて汚いラブホだって、公園だって良いのに。
それでも、俺の事を大切に扱ってくれる彼の優しさは素直に嬉しかった。
だから、部屋に入ってすぐにカラダを求められても、何も疑わずに受け入れてしまうんだ。
部屋に入るなり激しくキスをされ、お互いの服を荒々しく脱がせ合いながら、ベットへ雪崩れ込む。
彼の重さや、肌の感触、ぬくもりを感じるとすっかり仕込まれた俺の身体は、まるでスイッチを押されたように一気に体温が上昇し、全身が蕩けてしまいそうな感覚に襲われる。
そうなってしまえば、もう与えられる快感からは逃れられない。

「ココ、…いつもより柔らかいね。誰かに触られた?」

長い指が入口を簡単に解すと、松島さんが一気に侵入し、すぐさま激しく腰を動かす。
熱い塊で中から突き上げながら、俺を試すような質問。
それに大きく心臓が飛び上がっても、今なら疑われずにすむだろう。

「…じっぶんで…してまァっ…したっアアッ!」

昨日の事は言わないと、ここに来る前に決めていた。
それは、彼の気持ちを疑い始めた証拠なのかもしれない。

「悠はエッチだね、可愛いよ。」

失いそうになった理性を引き止められ、少しだけ快感が薄れても敏感な部分へ刺激を受ければ、すぐに快感に溺れてしまう。
何も知らなかった俺を、こんなふうにしたのもこの人。
俺にはアナタだけなのに…。
感情と行動が噛み合わないのを自覚しながらも、与えられる熱を愛情だと信じ、その夜俺は何度も彼を受け入れた。


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あきゅろす。
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