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授業開始のチャイムが鳴り、ラウンジから出ようとした時、一瞬だけ重森と目が合った。
けど、俺はそれに気付かないフリをして、そのまま一緒にいた友達と出てきてしまった。
ワザとじゃないけど、何となくそうしてしまったんだ。
重森は気付いただろうか?
そんな些細な事さえ気になって、講義に集中出来ずにいる。
考えれば考える程、頭の中には分からない事だらけで、自分でもそれをどう処理したら良いのか分からなくなってる。
重森が昨日変だった理由も、相手を裏切るような行為も。
それから、重森の気持ち…。
あんな事があっても、普通でいられるんだから、アイツにとって昨日の事はたいした事じゃなかったんだろう。
だから俺も、忘れてしまえばいい。

でもこれって、…浮気…なんだよな?
もし松島さんにバレたら、怒ってくれるだろうか?
変な期待をしてみるも、そういう人じゃないし、俺の事は本気じゃないだろうから、空しく思えてきて考えるのをやめた。


大きくため息を吐いて頭を抱えていると、時を見計らったかのようにズボンの後ろポケットから振動がした。
ディスプレイを確認し、『松島さん』の文字にドキッと心臓が飛び上がった。
待ちわびた人のはずなのに、今はなるべく会いたくない人。
緊張しながらそれを開くと、『今日の予定は?』と短い文章が表示されている。
松島さんが予定を聞いてくるのは、会いたいと言う事を意味している。
それを知っているだけに、今の俺の気持ちは複雑で、嬉しいけど素直に喜べない。
でも、やっぱり会いたい…。
きっと今の不安は、この人じゃないと消してもらえない。
『会いたいです。』という言葉と、俺の予定を返信し終えると、さっきまでの時間を取り戻すように講義に集中した。



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