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重森がどんな顔してるかなんて知りたくない。
どうせ答えは決まっているんだから。
重森から振ってくれたら、かえって諦めがつくかもしれない。

「何となくそうかなって思ってた。」

これで、重森とも終わるんだ。
次の言葉が怖くて返事もできないまま俯いて、ギュッと瞼に力がはいる。

「何で避けられてるのかな?ってあの後もずっと考えてて、偶然飲み会誘われてメンバー聞いたら悠の名前があったから、確かめてみようと思ってさ。そしたらやっぱ悠に避けられたから、俺もわざと無視してみたんだ。まさか泣くとは思わなかったけど。」

重森が鈍感な奴なら良かった。
泣いてたことまで全部気付かれてたなんて、本当に最悪すぎる。

「でも、良かった。」

「…え?」

「全然迷惑じゃないよ、俺も悠が好きだから。むしろ大歓迎!」

あまりの驚きにやっと顔を上げると、そこには目を細めて優しく笑う重森がいて、視線が交わった瞬間胸の奥がキューッとなる。
掌に温かい感触がして、手が繋がれたんだと理解している間に、お互いの唇が引き合って重なった。
嬉しいのに、苦しくて、切なくて、こんなにも泣きたくなるのは何でだろう?
今までセックスの行為の一部にしか思っていなかったものが、こんなにもドキドキするなんて。
急に後ろから人の気配がして、サッと唇が離れる。
それでも繋いだ手は離れることなく、そのまま俺達は歩き出した。




「俺、洋子さんとは終わったよ。」

「何で!?」

終わるハズがないと思っていた二人の関係が終わった事をいきなり聞かされ、俺はまた驚いて思わず声が大きくなった。
それが面白かったらしく、薄暗い住宅街に重森の明るい笑い声が響き、それを抑えるために慌ててシー!っと指を立てると、重森は笑ったままゴメンと謝り、話を続けた。

「あの時さ、洋子さんから電話来て出てった時。あの時悠がすげぇ泣きそうな顔しててさ、それがずっと頭から離れなくて…。あの人と一緒にいれて嬉しいハズなのに、何か違和感があって。そしたら結局フラれたんだけど、思っていた以上にショック受けてなくて、…逆にホッとしたっていうか、正直自分でも驚いた。」

「…まだ好き?あの人のこと。」

「何て言うかさ、今まであの人にこだわってた理由が分からなくなったんだよね。単に憧れてた人に近づけて、ずっと舞い上がってただけかも…なんて。確かにあの人といると刺激的で楽しかったし、ワガママに振り回されるのも好きだったんだけど、悠とバイトしたり、家でまったりしたり、そうやって悠と一緒に過ごす方が今は楽しいし、ドキドキするし、幸せだって思えるんだよね。」

俺も重森と同じ気持ちだった。
松島さんとはそれなりに、楽しくて、幸せだったけど、いつの間にか相手の気持ちが分からなくなって…。好きだって思い込もうとしていただけなのかもしれない。
重森とは、寂しさを紛らわせる為のセックスだったのに、いつからか俺は、重森に抱かれる事が嬉しくて、重森と一緒にいる事が1番幸せだって、ずっと重森といたいって、そう思ってた。

「俺も、終わったんだ。」

「そっか。」

知ってるというような口ぶり。
でも今は、そこは追求しなくてもいいや。
さっきからずっと繋いだままの手が温かくて、最高に幸せだと思うから。


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