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「重森くん!悠を送ってって。よろしくー!!」

「分かった。」

「えっ?…あっ、ちょっ!梅ちゃん!!」

俺と重森をバイバイ!と手を振りニコニコ笑いながら梅ちゃんは店内へと戻って行った。
どうしよう…、ものすごく気まずい。

「じゃあ、行く?」

「うっ、うん。」

歩き出した重森の後を追うように、俺も慌てて歩き出す。

「…重森も、来てたんだ?」

知ってるくせに。
沈黙を避けたくて発したのは、そう自分自身に突っ込みたくなるほど呆れた質問だった。

「うん。悠が来るって聞いたから。」

優しい笑みを浮かべる重森に胸が苦しくて、余計に何も言えなくなる。
無理矢理意識を重森から外すように目線を回りに向けると、にぎやかな大通りはとっくに抜け、いつの間にか薄暗くあまり人気のない静かな住宅街を歩いていた。

「よかったの?」

「何が?」

「…あの、一緒にいた女の子…とか?」

「ああ、やっぱ悠は俺に気付いてたんだ。」

少し飲み過ぎたのか、おかしなテンションで聞かなくていいことまで口から飛び出してきて、俺が重森のに気付いてたって事が、簡単にバレてしまった。
耳に届いた声が笑っていても、怖くてその顔を見る事は出来ない。

「あの子とよりも、俺は悠と一緒にいたいから。」

真っすぐ俺に向けられる視線。
でも、それに答える事は出来ない。
何で…?
何でそんな事言うんだよ。
そんな事言われたら、俺は…。

「どうした?」

急に立ち止まった俺を心配して、先に歩いていた重森が戻って来る。
そんな優しい目をするなよ!
俺は…、俺は…。

「重森のこと…好きだって言ったら、迷惑?」

とうとう言ってしまった。
アルコールの力で、しかもこんな場所でなんて最悪過ぎる。
俺のたった一言で、空気も景色も重森も、何もかもが一瞬にして凍り点いたような気がした。


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