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恋愛リアル
ジュウイチ
―敬吾 Side―

引きずり込まれるようにして初めて足を踏み入れたそこは、外とは全く別世界で、この場所だけ時間が止まっているように錯覚するほどだった。
想像よりも大きく、歴史を感じる木造建築。
古いという表現が似合わないほど、高校生の俺から見ても見事な建物だと思った。
そして庭もすごくて、昔誰かに連れていかれた京都の有名な日本庭園みたいだ。
綺麗に手入れされた庭をゆっくり眺める余裕も与えられず、夏樹にグイグイ手を引かれ母屋であろう大きな建物とは別の一番奥にある現代的な小さな建物へとたどり着いた。

「カギして。」

「あっ、うん。」

戸惑いつつも言われるがまま、ドアの鍵を掛ける。
まだ追いついてこない混乱した頭が軽く麻痺したみたいにボーっとなって、理解するにはもう1度整理と説明が必要みたいだ。
えっと…さっきまで先輩と晃史さんていう人がいて…。

「…あのさー。先輩とは本当に何もなかったの?」

「はぁっ?お前さっき聞いてなかったのかよ!アイツはただ相談ってか、勝手にノロケてただけだし。」

誰かが住んでいる様子はなく、テーブルと椅子以外家具が全くない。
埃のない掃除の行き届いたフローリングの床に、ドカッと勢いよく夏樹が座り込むのを見て、慌てて隣に正座した。




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あきゅろす。
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