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恋愛リアル
キュウ
−敬吾 Side−

いったい…どうしたんだ?全く事態が飲み込めないまま、走り去る背中を追いかけるなんていう考えは、ヘタレの俺にはこれっぽっちも浮かばなかった。
ただ呆然とその場に立ち尽くすのみ。
何で夏樹は泣いていたんだろう…俺には思い当たる理由が全く見つからない。
身も心もズタズタだったであろうあの日すら、アイツの瞳からは一滴も涙が零れることなんてなかったのに、さっきはポロポロと切ない顔で泣いていたんだ。
何でだろう?この間襲われた件はもうケリは着けたって言ってたから、それ絡みじゃないとは思うんだけど。
じゃあ、何で…?
考えれば考える程どんどんと謎は深まるばかりで答えが見えて来ない。
それでも涙の理由が知りたくて、記憶を廻らせる。


「あっ!追いかけなきゃ!!」

なんとなくそうしなきゃいけないと思った。けど気付いた時にはもう遅くて、そんなんだから夏樹の姿はあるわけがない。
俺はどうもこういう時に気付くのが遅いらしい。キスのタイミングとか、ケンカしたら追いかけるとか、どうも相手の要求を理解出来ない人間なのだ。
だから好きな子が出来ても、あまり進展せずに終わってしまう。ってか今そんな反省してる場合じゃないから!
もしかしたら、アイツも俺が追って行くのを期待してくれていたのだろうか?
マジで何なんだろう?迎えに行かなかったから?告白を断ったから?ってかそれで夏樹が泣くか?分からない…全然浮かばない…。俺泣かせる様な事した覚えがないんだけど。
『好きな子がいるから』って言ったの絶対聞かれたかなぁー?
アァー!何でよりによって本人に聞かれちゃったんだ!!
まだ俺は告白する覚悟なんて出来てないんだよ!!

夏樹とキスをしてから、俺は初めて会った時の事を思い出してしまう。
透き通る程白い肌に誰かがつけた赤い痕を花びらみたいに散りばめて俺を誘う姿を。
俺はその痕跡を消したくて…そして今度は自分がそれを、あの白く綺麗な肌に…って思っている。
忘れていたはずの光景が甦って、あれから夏樹をそういう対象としてみてしまう自分が、恥ずかしくて堪らないんだ。
そして堪らなく嫌になる。
結局俺も男で、他の奴とたいして変わらない。
ただ実行に移せないってだけで。
綺麗で美人だけどワガママで素直じゃなくて性格悪いし女王様気取りで常に上から目線で、一緒にいてムカつく事は多いけど、なぜか許せてしまう。
自分で思っている以上に、俺はかなり夏樹が好きなんだ。
だから本当は、誰にも触って欲しくない。


とにかく思い当たるだけ行きそうな場所を捜して回ったけど、夏樹には会えなかった。
家にも行ってみようともしたけど、明日学校で会えるだろうと簡単に考えて行きかけの道をすぐに引き返してしまった。
でもこの時無理矢理にでも家まで行ってちゃんと話していれば良かったと、あんなに後で後悔するなんて思いもしなかった。



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あきゅろす。
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