[携帯モード] [URL送信]

恋愛リアル
ロク
「…ハッ?ナンデ?」

なんでキスなんだよ!?今日は全部ワガママ聞いてやるつもりでいたけど、それとこれとは別だ!なんで付き合ってもいないのにキス?男同士でキス?なんで俺からすんの?
分からない…。全くもってコイツの思考回路が読めない。もしかして、さっき俺が言いそうになった勘違いな気持ちに気付いて、それをまた言わせようとしてるとか?

「口直しだよ!口直し。何でもするんだろ?」

ああ!口直しかー。なるほどねー!!ってなんねぇから。なんだよそれ?確かに何でもするって言っちゃたけどさー。

「何デ俺ト?」

「だってアンタしかいないじゃん!俺は今したいの。」

それって俺とじゃなくても他の誰でもいいってことか。なんて自己中なんだ!!俺の気持ちはまるで無視かよ。なぜか分かんないけどだんだん腹立って来た!!

「なんだ、出来ないんだー!せっかく俺にキスしていいよって言ってるのに、アンタって本当ヘタレだよね!」

だったらやってやろうじゃん!!両手で夏樹の顔をガシッっと押さえ、その薄く開いた唇に噛み付くようなキスをした。
ヘタレ扱いされてキレたんじゃない。ただ、夏樹に『どうだ!俺だってこれくらい出来るんだ!』って分からせたかっただけ。
いきなり激しく舌をねじ込んで口内をむさぼり、夏樹の舌に俺のを絡める。初めは驚いたのかされるがままだった夏樹の舌が、俺に答えるように動き出し今度は俺がその動きに驚かされる。
攻めていたつもりが、いつの間にか必死に追いかける側になり、あっという間に翻弄されてしまう。これが経験の差なのだろうか。まるで歯が立たない。
それを感じるとなんだか悔しくて。腹立たしい。俺のちっぽけなプライドのせいでもあるけど、それ以外の理由の方が大きいみたいだ。
やがて、ついばむような優しいキスに変わり、名残惜しそうにお互いの唇が離れた。

「…もう、他の奴とこういう事すんなよ。」

誤魔化しようのない真実…。
あまりに信じがたいけど、俺はどうやら夏樹のことが…好き…みたいだ。
そういうことなら、あからさまにつけられた赤い痕跡を見た時のイライラも、抱きしめたいと思った時の感情も、キスも、すべて納得がいく。
もう二度と、無理矢理されたり、誰かに触られたりしたくない。
さっきのキスだって、他の奴としてたのかと考えたら勝手にムカついた。
これじゃあ夏樹に酷い事した奴らと対して変わらない。きっと怒ってる、もう口も聞いてもらえないだろう。
恐る恐る夏樹の様子を伺うと、予想外な反応で瞳を潤ませ、顔を真っ赤にし、少し動揺しているように見える。

「…あっあのー…ゴメン。」

やっぱり俺はヘタレなのかもしれない。動揺した夏樹に余計動揺した俺は、謝罪の言葉しか浮かばなかった。


[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!