[携帯モード] [URL送信]

恋愛リアル
サン


何なんだ…この恐怖感。



敬吾の家だからなんて気楽について来たけど、よく考えればテレビで流れてるCMはコイツの父親が経営する会社のものだったり、ニュースでもよく名前聞くし、普通の家に住んでるはずがないのに敬吾のバカさ加減で全く気付かなかった。なんか…ここに居る事が物凄く場違いな気がしてきたな。
笑わないアイツを見るのはなぜか不安で堪らない。こんな状況で笑える奴もおかしいか。

今日敬吾は俺に会ってから、一度も笑ってない。あんな事があったから当たり前なんだろうけど、学校を出た後も必要以上話さなかった。ここに来て今まで知らなかった敬吾を見た時、なんていうかマンションに入るなりいきなりアイツの空気がピリッて変わった気がして…それがすごく嫌だった。
部屋に入ってからも落ち着かなくて、押し潰されそうだ。
俺の知らない敬吾なんて見たくない。
さっさとシャワーだけ借りてここを出よう。そう決心し、素早く汚れた制服を脱ぐと浴室へ飛び込んだ。

「つめたっ!」

温度も確かめずに、いきなり降ってくる水に当たった。でも驚いたのは一瞬で、慣れてしまえば今は冷たい温度が心地良い。少し頭を冷やせばここを出るまでさっき感じた恐怖に押し潰されずに、いつもの様に敬吾に悪態をついていられる。
それに…自業自得とはいえ、傷付けられた心とカラダには丁度良かった。
こんな事は始めてじゃない。だんだんと悲しいとか悔しいとか辛いとか、思わなくなった。俺にはもっと辛いと感じる事があったから。
晃史とヤッてる時は最高に幸せだったけど、終わった後は最高に不幸だった。今はもうそれも無くなって、もっと何も感じなくなった。
けど、心にポッカリと大きな穴が開いてる感じがするのは気のせいなのだろうか?


もう何も考えたくない。
何も感じたくない。



「夏樹、着替えここに置くぞ。」

ドア越しから届く敬吾の声にハッと我に返る。

「おっおう!」

「ちゃんと温まれよ!」

見てたのかと思うような言葉に慌てて、温かいと感じるまで温度を上げて体を温め始めた。

[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!