恋愛リアル
イチ
−敬吾 Side−
夏樹とはあれから仲良くなって、結構話もするようになった。
やっぱり悪い奴じゃない。女王様気取りで、生意気で、素直じゃないけどそれは意地張ってるだけだって分かった。本当は寂しがり屋で誰よりも友達思いで優しい奴。
だから余計に分からない。何であんなにセックスに依存するのか。
あの日…。あの辛そうだった夏樹を思い出すとなんか腑に落ちなくて。なんつーかワザとみたいな?俺の勘違いかもしれないけどね。
仲良くなっても夏樹は相変わらずで、そのことをあらわす様にいくつも赤い痕を白く綺麗な肌に残していた。一日だって消える日はなくて、それを見るといつも胸がムカムカして痛かった。
その不快度は日に日に増していき、イラつきさえおぼえる。
「今日の奴マジ最悪。」
ため息混じりで今日の感想を愚痴る夏樹に俺の方がため息。
「なんだよ!」
「お前には理性ってもんが無いわけ?」
「欲望に正直で何が悪いの?アンタこそ出さないとハゲるよ。あっ!何なら相手してやろうか?アンタ意外に上手そうだし。」
俺の忠告も聞かず、夏樹は涼しい顔でクレープを食べ続ける。まったく日頃の行いを改めようなんて考えは持ち合わせていないようだ。
柊ちゃんと朔弥がめでたくくっついてから、放課後はこんな感じ。夏樹と二人で毎日のように一緒に帰って、たまに寄り道してゲーセン行ったりその辺ぶらついたりして帰る。
意外にもコイツは甘いものが好きらしく、帰りは決まって何か買って食っている。たまにおごらされる事もしばしば。きっと俺のことを都合の良い奴としか思ってないんだろう。
まあ、結構俺も楽しくやってるんだけど。
「いつか酷い目にあうぞ。」
それから数日後、俺の予想が見事に的中する事態となる。
いつも俺が夏樹を教室まで迎えに行く。「迎えに来い!」って言われて、当たり前のように従う俺。初めはムカついたりもしたけど、夏樹は女王様だから仕方ないかって何故か納得している。
今日は、HR終了後にしょもない理由で担任に呼び止められ、だいぶ遅くなってしまった。きっともう夏樹のクラスはとっくに終わっていて、女王様はさぞかしご立腹なのであろう。
お詫びの品を要求される事間違いなしだな。
急いで教室にたどり着いて、恐る恐る中を見渡すと、なぜかいるはずの夏樹の姿が見当たらない。
おかしいなー、なんだかんだ文句言いながらもいつも大人しく待ってんのに。
まだ教室に残っていた奴に聞くと、どうやら数人の先輩が夏樹を連れ出したらしい。
何だろう…。胸騒ぎがする。
走り回って、手当たり次第探しても夏樹の姿が見当たらない。
「っくそ!どこいったんだよ!!」
焦りと苛立ちが増してきた頃、長い廊下の向こう側から良く知っている顔がフラフラと力無く歩いてくる。だんだん近づくにつれ、Yシャツのはボタンがとれかけ、薄汚れ、左の頬は腫れ、唇の端からは赤く血が流れたあとがある。
出来れば他人の空似であって欲しかったけど、そいつは紛れも無く俺の探していた女王様だった。
「…お前、何されたの?」
「先輩達にまわされちゃったー。」
夏樹はどーってことないって感じで笑いながら言ったけど、それがなおさら痛々しい。
「送ってくからとりあえずこれ着とけ。」
洗濯するために持ち帰るはずだったジャージの上着を手渡すと、夏樹は無言で受け取った。
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