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恋愛リアル
ハチ

昼休みが終わり、なんとなく携帯を開くと悠馬から誘いのメールが届いていた。
内容は、次の授業サボろうというもの。目的ははっきりしている。アイツがそれ以外で俺を呼び出す事なんてしないし、俺も同じ。あんまり気乗りはしないが教室に戻ると黒板に大きく『自習』と書かれた文字を見て、しかたなく誘いにのることにした。




「…何で屋上?」

ヤッた後、当然の疑問を悠馬にぶつける。だってこんな炎天下ですることないだろ?ったく場所選べよ。お陰で喉はカラカラに渇いて話す気力もない。

「えー!だってここ開放的じゃん。なんか興奮しねぇ?」

全くもってしねぇよ。コイツのテンションには毎回ついて行けない。最中は男らしく豹変するくせに。こいつは一生変わらねぇなーってなんとなく思った。
制服を着直して携帯を取り出し時間を確認する。まだ授業終了まではかなり時間がある。このままコイツほっといてどっか行こうかな?なんて考えてると分厚い入り口のドアがもの凄い勢いで開いた。

「なに!アイツ超荒れてない?なんか黒いの出てるよ!!」

さすがに悠馬も驚いたのかさっきまでのヘラヘラした表情が一気に引き締まる。

「あれ、朔弥じゃん。」

「何?あれと知り合い?」

めずらしい。悪魔とは聞いてたけど正直その姿を見るのは初めてだ。頭でも冷やしに来たのか額にジュースの缶をあてている。ラッキー!ジュース貰っちゃお。恐怖でガタガタの悠馬をほっといて、俺は悪魔に近づいた。



「あれー!アンタもサボリ?」

話すのは柊が倒れた時以来。不機嫌極まりない朔弥に怯むことなく、ウキウキしながら声を掛ける。悠馬が逃げるように屋上を後にするのもたいして興味がない。俺の興味は今、この悪魔の怒りの原因。
いくら悪魔でも常にその姿をさらしているわけじゃない。そこにはいつも柊がいるから。それがこんなに怒りを露にして取り乱してる。きっと何かあったに違いない。
隣に座り、朔弥からジュースを奪っても怒る様子もない。そのまま気にせず渇ききった喉を潤した。

「何かいっぱいいっぱいって感じだね。柊と何かあった?」

「何もねぇよ。」

図星か。俺はもっと聞き出す為にわざと朔弥を煽る。

「へぇー。俺はてっきりもうキスぐらいはしたのかと思った。」

その言葉にかなり驚いて焦った様子の朔弥を見て、思わず吹き出しそうになる。そうやってどんどん動揺すればいい、次の確信的な言葉で一気に本音が聞ける。

「柊って超カワイイだろ!アンタ手早そうだし、だから。それに…アンタ柊の事好きだろう?」

俺の言葉に一瞬目を見開いて驚く悪魔、ありえないくらい似合わない顔だ。その顔には瞬時に見抜かれた悔しさで眉間にしわがよる。
しばらく考え込んでいた朔弥が低い声で吐き出す様に口を開いた。

「あの女…誰?」

あの女…?多分最近柊の周りをうろついてる奴の事だろう。俺も確かに気に入らなかった。目的は何だか知らねぇけど、勝手にいきなり近づいて来て俺をなぜか邪魔だと睨みつける。単に柊と仲良くしたいなら俺だって納得がいくけど絶対あの様子はそうじゃない。話を聞いていくと朔弥はその女に嫉妬しているようだった。
ったく、バカじゃねぇの?嫉妬するぐらいならいい加減柊を幸せにしてやれよ!アンタしか出来ないじゃん。何待ってるとか?マジでイライラして来た。ここで俺がキレても仕方ないからそれなりの言い方で言いたい事を言ってやった。朔弥もなんか吹っ切れたみたいだ、俺の事を朔弥がどう思おうが柊と上手くさえいってくれれば何だっていい。

「さーて、そろそろ次の授業始まるし戻ろっと。アンタも戻ったら?きっと今頃柊のやつ必死で捜し回ってるぜ。」

屋上から出て階段を下りるとタイミング良く必死顔の柊が現れた。体育嫌いのお前がこんなに走った事ねぇんじゃねーの?そんだけ柊にとって朔弥は特別なんだな。近づく二人の距離を背中で感じながら、ちょっと寂しさを感じた。



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