キミのトナリ 暗点 あれから何度もキスをして、抱き合って、それからまた朔弥と深く繋がった。 言葉で、行為で、全身で気持ちを伝えあって、今まで生きてきた中で、一番の幸せを朔弥からもらった。 だから、僕も今持ってる力全部でいっぱい好きって気持ちを伝えた。 朔弥がとても優しい、僕にしか見せない顔で笑ってくれたから、与えられるだけじゃなくて、僕も朔弥に返せてるんだと思えて、それがすごく嬉しい。 このフワフワした、優しくて温かな幸せが、ずっとずーっと続きますようにって願ったんだ。 でも…やっぱり、僕なんかが願っちゃいけなかったのかな。 求められるのが嬉しくて、それを全身で受け止めて、答えたくて、でも身体がギシギシと痛くて。 自分の体力のなさに落ち込んだりして、数日を過ごした。 朔弥が買い出しに行ってくれた以外は、ずっと2人で家に引きこもって、誰とも連絡を取らなかったから、なんだか世界に2人だけしかいないみたいな、不思議な感覚だった。 夏樹や本田くんのこととか、朔弥の家族とか、考えなかったわけじゃないけど、ズルい僕は、朔弥を独り占めしたくて誰にも邪魔されたくなかった。 朔弥がいれば、他に何もいらないって思っちゃったんだ。 だから、なのかな。 僕の携帯が、すぐ誰からなのか分かるよう特別に設定した音で、数ヶ月ぶりに鳴り響く。 「どうした?」 様子がおかしい僕に、すぐ朔弥は気づいてしまう。 でも、それを隠したり、誤魔化す余裕が僕にはなくて。 「…かぁ…さ…から」 声が震える。 さっきまでが嘘みたい。 一気に目の前が真っ暗になり、頭から足のつま先まで、サーっと血の気がひいて、手足が一気に冷えたような感覚になる。 母からの電話は、いつも僕にとって良くないことで…だから、今回もきっとそうだ。 でも、…なんで今なの! 神様なんて、本当はどこにもいないんだ…。 [前へ][次へ] [戻る] |