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キミのトナリ
A

「朔ちゃん!遅い!!」

玄関のドアを開けるなり、母親にパジャマ姿のまま仁王立ちで出迎えられる。
多分いつものように早起きして、仕事を片付けていたんだろう。

「コイツ、寝てるから静かにしろよ。」

少し体を傾けて、特別にかわいい寝顔を拝ませてやると、鬼の形相が嘘のようにパッと笑顔になる。

「キャー!かわいい!!」

だから静かにしろよ!!
こっちが怒りたいが、早くかわいい寝顔を独占したくてそれを無視した。
おぶってると、密着はするけど顔が見れないのが不満だ。
2階の自室へたどり着くと、柊を出来るだけ優しくベッドへ寝かせた。
全く目覚める様子がないのを寂しく思いながら、起こさないようそっとキスを落とし、一緒にベッドに入り、ようやくかわいい寝顔を堪能する事が出来た。

結局自制心が働かずにまた繋がって、それから柊は深い眠りに落ちたままだ。
少し眠ってからラブホを出た頃には、もう夜が明けようとしていた。

大切にしたいと思う反面、身勝手に強く愛してしまう自分に対して腹が立つ。
俺はこんなにも馬鹿だったのかと。
今までこんな事考えもしなかった。
柊を優しく包んでやりたい、守りたいはずなのに、全て奪って壊したくなる。
矛盾する感情でイラつき、吐き気がした。
それでも…柊が俺を好きだと言った。
俺を求めて、辛くても全て受け止めててくれた。
こんなに満足感で満たされるのは、生まれて初めての感覚だった。
柊はどこまで俺を受け止められるのだろう?
どこまで求めてしまうのか、見当もつかない自分自身に不安がよぎる。
もし、俺のせいで柊が壊れたとしても…それでも俺は、柊を手放す事なんて出来そうにない。

規則正しい呼吸音が、こんなにも安らぐものだとは知らなかった。
ずっと一緒にいたいと思うのも、離れている間に強く想う事も、愛しさで胸が苦しくなるのも、全部柊じゃなきゃ有り得なかった。


だから…これが俺にとっての初恋で、きっと最後の恋だ。




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