キミのトナリ D 「ハァー。」 内容が頭に入らないまま授業は終わり、今の自分の状況に頭を抱えてため息を吐いた。 俺はいつも冷静で、それが自分事であろうが他人事であろうが、感情に流されて判断したりしない。 それが柊の事になると、こんなにも心が乱されて、不安になって、落ち着きがなくなる。 まるで余裕がない。 本当は今すぐにでも、柊に会いたい。そんな自分に必死にブレーキを掛ける。 欲求をぶつけるのは簡単だ。 けど、それは俺しか満足できない。 今までは何も考えずに、ただそれだけで良かった。 でも、今は違う。 この前みたく、アイツを泣かせたくないんだ。 誰よりも柊を大切にしたい。 同時にその気持ちの裏で、膨れ上がる欲望。 今でも簡単に柊の肌に触れた感触をはっきりと思い出せる。 早く繋がりたい。俺のモノにしたい。 この前、女に迫られてキスされたけど、何も感じなかった。 それがあの時の事を思い出すだけで、かなりヤバイ状態になる。 マジでヤベーな。もう極限状態だ。 唇にキスなんかしたら絶対抑えられねぇから、最近はデコチュウで精一杯。 いつまでもつかなー?俺の理性は。 「柊の事傷付けたら、アンタ潰すから。」 授業終了のチャイムが鳴ると同時に、また夏樹がやって来て、そう言い放つとそそくさと去って行った。 普段の俺なら「やれるもんならやれよ!」とでも言い返していただろうが、今はそんな気にならない。 やけに絡む態度に疑問を感じながらも、理由を聞こうと引き止める事はしなっかた。 そんな事は言われなても分かっている。俺だって柊を傷付けたくはない。 じゃあ、どうすればいい? 好きな奴とヤリたいと思って何が悪い。それが柊を傷付ける事になるのか? ダメだ、いくら自分の中で葛藤したって行き着く所はいつも同じで「柊が欲しい」それだけ。 成長しねぇーな、俺。 苛立ちを抱えたまま教室を出て、制服のポケットから携帯を取り出す。 柊からメールを少しだけ期待していたが、画面はいつものまま。 こんな事が寂しく感じるとは、俺自身思いもしなかった。 その気持ちを隠しながら、なるべく柊の負担にならないよう短い文章を送信する。 何でもいいから、早く元気になって欲しい。 隣に柊がいないのが、寂しくて堪らないんだ。 自宅に帰ってからも全く落ち着かず、柊からの返信を期待していたが、日付が変わっても送られて来ることはなかった。 [前へ][次へ] [戻る] |