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キミのトナリ
A
家から歩いて15分ほどの場所にある、市立図書館が僕の唯一のお気に入りの場所。
学校の図書館もよく行くけど、ここの方がたくさんの種類の本を見られるし、冷暖房完備で1年中快適な温度に保たれてるし、匂いとか、静さかとか、少し古い感じの雰囲気も好きなんだ。
久しぶりに大好きな場所に来れてすっかり気持が軽くなった僕は、さっそく目当ての本を探しに本棚へむかった。
前から気になっていた小説。
場所はだいたい分かってるのでそれはすぐに見つかり、他の本も何冊か手に取ると受付カウンターへ向かう途中、すれ違った人と肩がぶつかって持っていた本が僕の手から落ちた。

「すっすみません!」

僕は咄嗟に謝ってしゃがみ込むと、慌ててそれを拾った。

「…キミ、よくここに来ているよね?」

突然の声に驚きながら顔を上げると、そこには黒いフレームの眼鏡をかけた見るからに頭の良さそうな男の人が立っていた。
この人どこかで見たことある気が…えっと、学校の集会とかで確か…あっ!そうだ!!

「…もしかして、生徒会の…?」

「そう!僕は平野 智史。キミと同じ学校の3年で生徒会で会計やってます。」

「はっはい!あああの、何度かお見かけした事が。」

その人は気難しそうな外見とは違って、とても優しく明るい雰囲気で僕に話しかける。
目がシュッと細くてキリッとしてる顔立ちで、とても大人っぽい人だと思った。

「キミも学校では有名人だよ!立花 柊くん。霧島 朔弥といつも一緒だもんね。」

そんなに僕の存在がみんなに知られてるなんて知らなかった。
確かに朔弥はカッコイイし、いろいろと有名みたいだから分かるんだけど、僕なんているかいないか分からないような人間だし。

「また、会ったら声かけて良いかな?」

「ははっはい!よっよろしくお願いします!!」

僕の慌てる様子をクスッと笑って平野先輩は本棚の方へと歩いて行った。
何で僕になんか声かけたんだろう?
疑問に思いながらも、話しかけてもらえた事がとても嬉しかった。
それだけで、何だか僕の存在を認めてもらえたみたいな気がしたんだ。

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