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キミのトナリ
G
ハルさんが休む部屋を用意してくれたが、全くそんな気になれない。
少しだけでも柊の顔を見たいとお願いして、少しだけならと無理を聞いてもらった。
まだ泣き続ける夏樹を敬吾と兄貴に任せ、ハルさんと2人で柊の元へ向かう。
案内された病室のドアが開くと、今夜搬送されてきた様子の患者数人がベッドで眠っていて、その中に柊の姿があった。
ピッピッと心臓の鼓動を知らせるモニター音。
白く細い腕には点滴、さらに鼻にチューブがつけられ、静かに眠る姿は最後に見たときより小さく見えて、息苦しいほどに胸が締め付けられて見てるだけで辛い。

「…ごめんな」

自然とつぶやくように出た言葉。
余りにも不甲斐なくて、情けなくて、顔にやさしく触れることしか、それしか出来なかった。



病室を後にして、敬吾たちがいる部屋に戻ろうとしたが、少し1人になりたかった。
目に留まった廊下の長椅子に腰を下ろして、ため息を吐き出して頭を抱えた。
柊に触れた部分だけ熱いままだ。
それだけが、今唯一柊を感じられる感覚で、たまらずもう片方の手で包んで胸に抱き寄せる。
何も出来ない自分が、悔しくてたまらない。
俺は、どこも傷ついたりしていないのに、さっきからずっと全身が切り裂かれるみたいに痛い。
泣きそうになるのを、今はそんな場合じゃないと必死に耐える。
本当は柊ごと抱きしめたかった。
消えてしまいそうな、いつも以上に透き通るぐらい白くて、小さく見てた身体。
今まで感じていた不安の正体は、きっとこれだ。
多分、こうなることがずっと不安だったんだ。
柊が俺の前からいなくなる。

『最悪、施設行き』

兄貴の言葉が頭の中でリピートしてる。
通報とか、そういう心配をするってことは、つまり虐待とか…そういう方向なのか?
柊の場合だと、暴力はないだろうけど…育児放棄ってやつなのか?
もし仮にそうなったら…俺と柊はどうなるんだろう?
もう、会えなくなるのか?


もし、そうなったとしても、俺は絶対に柊を諦めたりしない。
柊が俺と離れたがっていても、絶対に離れてやらない。
今俺が出来ることは、それしかないんだ。

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