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キミのトナリ
A
今頃、柊はどうしているだろう。
お湯につかりながら、考えることはさっきと変わらない。
泣いてないだろうか?
ひどいことをされていないだろうか?
普段の母子関係が見えないだけに、推測すらたてられない。
柊のことになると、こんなにも心配で不安で心細ささえ感じている自分が怖くなる。
もし柊に何かあった時には、俺は正気じゃいられない。

他人に全く興味を持てない俺が、やっと見つけた唯一本当に愛おしい大切な存在なんだ。
心も身体も深く繋がって、ようやく嫉妬するぐらいに、柊も自分から求めてくれるようになって、守れるのは俺だけだと、勝手に高をくくっていた。
でも実際今の俺じゃ、ガキ過ぎて無力で無能で馬鹿で…。
なんの力も持っていない。
こんなんじゃ、柊を助けるなんて到底無理だ。
柊の母親の存在によって、それが痛いほどに思い知らされる。

「クソっ!」

悔しくてたまらない。
一瞬涙が出そうになるのを、そんな場合じゃないと振り切るように湯船から上がった。





「ねぇー、柊ちゃんとケンカ?」

キッチンに向かうと、兄貴が換気扇の下で煙草を吸いながら、何か言いたそうな視線を送ってくる。
それと同じものを、テーブルでクッキーと紅茶でおやつタイム中の妹も向けて来る。
明らかに俺に非があるような言い方で、不機嫌な口調だ。

「違うし。柊の母親が…」


一瞬ためらったが、とにかくこのグチャグチャした気持ちを吐き出したくて、俺が知っている少ない認識の中での柊の家庭環境と、今日した柊とのやり取りを妹兄に話し出す。
今までの俺なら、こんなこと絶対にしない。
ありえないという驚きの表情が2人から伝わってきたが、気付かないふりをして話をつづけていると、次第に真剣な顔で黙って聞いてくれていた。

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