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キミのトナリ
@
―朔弥 side―

胸騒ぎがする。
足元から崩れ落ちそうで、嫌な想像しか浮かんでこない。
こんなにも不安感に支配される感覚は、記憶にない。
俺は、あの冷たい家から柊を連れ出せなかった事をかなり後悔しながら、それが正しかったのか、これからどうするればいいのか、頭をフル回転させて必死に正解を探す。
激しく鳴り響く雷と強いく打ち付ける雨の中を歩き、気が付くと目の前に自宅のドアがあった。
どのぐらいだったんだろう。
引き返したい気持ちが強くて、なかなか玄関のドアを開けられないまま突っ立っていた。

「おい!何してんだ!」

ちょうど仕事から帰って来たらしい兄貴の、背後からの怒鳴り声にやっと我に返る。
兄貴のこんな驚いた顔見るのは久しぶりだ。

「バカか?早く入れ!!」

肩を強く抱かれ、力任せに玄関に押し込まれた。
いつもならバカじゃないと訂正するが、そんなのどうでもよかった。
せっかく柊が渡してくれた傘も、この雨では頼りなくて、すっかり全身ビショビショに濡れてしまった。

「乃絵!タオル持ってきてくれ。あと、風呂。」

一足早く帰宅したらしい妹を見つけるなり、早々に指示を飛ばす。
強めの言い方から何かを察したのか、妹は急ぎ風呂のスイッチを入れ、玄関に向かいながらバスタオルを投げてよこす。

「あれ?その傘」

「何?」

「これ、やっぱそうだ!これ私の!!ここにクレムのロゴ入ってるじゃん。もー!!いっつも2人して勝手に持ってくんだから。」

言われている意味が分からない。
柊の家に初めて泊まった日に、確かにこの傘は柊の部屋にあったはずだ。
うちに来た日に貸したとか、…それはない。
じゃあ、何でだ?
何で柊の部屋に?
見た目は、コンビニで普通に売られているようなただのビニール傘だ。
だが今聞いた主張通り、そこにはクレムという最近女性に人気だとテレビでやっていたブランドのロゴが小さく入っている。
あいつがこんなの持っているハズがない。

「そんなんどうでもいいだろ。朔!お前は早く風呂行け!!」

混乱してフリーズしかけた頭上にドスンと衝撃が走った。
容赦ない兄貴の鉄拳。
流石にイラっと来たが、反撃する余裕なんて今はない。
仕方なく無言のまま、風呂場へ向かった。

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あきゅろす。
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