蒼い瞳(シノアイ)
[喘ぎ喘ぎ、ひたすら俺を求める彼を
どうして優しく抱き締めてやれないのだろう?]
俺達は不定期に互いの身体を貪る。
それは大抵、何かしら戦いがあった日の夜。…時々昼間。興奮の収まらない身体を落ち着けるため、というのが目的なだけで愛が伴う行為では決して無い。
今回も同じ理由で、俺がアイクの天幕へ行き、当然のようにアイクは服を脱ぎ身体を鎮めた。
行為の後の気だるい感覚は昔から嫌いじゃなかった。
だからか、俺は何となく…そう、何の感情も無く、蒼い髪を指で鋤いてやるのが恒例だった。
蒼い髪が汗で少し湿っている。
目を半分閉じて、気持ち良さそうに横たわる姿。それは戦場での彼と別人のようだった。
「…シノン」
ぽつ、とアイクが俺の名前を呼んだ。
俺は蒼い髪を弄ぶ手を止め、なんだ、とだけ呟き返した。
「あんた…嫌じゃないのか?」
何のことを言っているのかが分からない。
そう言おうとして口を開きかけると、それより先にアイクが口を開いた。
「嫌いな奴を抱くの…嫌だろう?」
か細い、震えた声。
まだ18歳の発達途中の身体が
傷痕だらけの傭兵の身体が
微かに震え、怯えたように俺の瞳を見ていた。
---なんて、答えればいいんだ?
確かにコイツは嫌いだし、抱くのは女の方が柔らかくて安心する。
---なんで、俺はコイツを抱いてきたんだ?
---なんで、お前は泣きそうな顔で俺を見る?
---なんで、俺は
お前を拒絶しないんだ?
俺を見る蒼い瞳に、情けない顔をした俺が映っていた。
end.
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