駄文
同属嫌悪な男達 - 02
(いやぁ…さっきのはまずかった。)
先程の光景を思い返して、にやけ8割、苦笑2割。
なんせ頬が触れ合う程至近距離で、軽く千影を振り仰ぐ形になる体勢のまま、ピクッと目を閉じるものだから
(あそこでど突かれてなかったら、密着した状態でおっ勃てるとこやった。)
実際、前屈みになったのも、腹の痛みよりもソッチの事情によるところの方が大きい。
20代後半だとはいえ、千影も健全な男子。
勃ってしまうものは仕方がないが、単なる戯れ合いだと思っている隼人に気付かれるのは、何やらその…気まずい。
「てか、なんか久しぶりな感じしねぇな。」
「なんや、そない毎日俺のこと考えてたんか?いやん、俺ってば愛さ」
「あれか、マンネリ化ってやつか?」
さぁ俺の胸に飛び込んでおいで!と熱い抱擁をしようとした千影の顔面を、隼人は慣れたように片手で押し退けつつ、うーんと首を傾げる。
「ぬぅ、愛のキャッチボールが…なぁ、ボンからも言ってやってぇな。千影さんへの愛が足りないぞ☆って。」
いつもながらの扱いに、隼人の肩に懐いてしくしくと嘆き、少し離れた所でモップがけをしている涼一に話を振る。
それに対して、今まで意図的にこちらに背を向けていた涼一は、振り返って千影にギラリと物騒な眼を向けた後、隼人に向かって
「アンタ、対応甘過ぎ。付き合いを改めるか、躾し直せ。」
不機嫌にそう言い、また視線を外して掃除に戻っていく。
「俺は無視かい!いつもながら冷たいなぁボンは…。なぁ、マサヤン。」
その発言に特にショックを受けるでもなく、通りすがりの雅也に同意を求める。と
「そうですね。不慮の事故に遭う前に、その手を離して帰るといいと思います。」
にこり、とどこか黒い笑みを浮かべて言葉を返し、去って行く。
たらりと汗を流し、それを見送ると、隼人に向き直る。
「なぁ…ここの店員、なんか冷たない?」
「何言ってやがる。被害妄想だろ。」
いつの間にか千影を放って、洗った食器を拭いていた隼人は見もせず言い捨てる。
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