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駄文
はじめてのおくりもの - 04


(渡せ…なかった…。)
ずぅぅんと、両手をテーブルにつき、涼一が人知れず凹んでいると、隼人が近寄り、こつりと涼一の頭に何かを乗せる。

「…?何。」
「んー。まぁ、おめでとう…の気持ち?」

涼一がそれを持ったのを確認して手を離した後、隼人はカウンターの席に腰掛け、煙草に火をつけて、ふぅっとふかす。
手にした小箱と、何も具体的な説明をしない隼人とを訝しげに交互に見てから、恐る恐る箱を開く。

「…これ…。」

箱から取り出した、紫がかった紅い色のピアスに目を瞬かせてから、不思議そうに隼人を見やる。
すると、ちら、と視線だけ涼一に向けて、隼人が憮然と口を開く。

「だから、誕生日。今日で二十歳だろ、お前。」
「でも…あんた、いつもこーゆーの渡さない…」
「うっせ、気が向いたんだよ。二十歳は色々と節目だし、記念にな。」

信じられない、といった風に目を見開いた後、珍しく困惑気味に目をうろうろとさせたかと思えば、しばらくして俯き、…ぁりがと、とポツリ呟いた。
耳を赤く染めて言われたその言葉に、隼人はくすぐったそうに笑い、どーいたしまして、と言って灰皿に煙草を押しつける。
心なしか嬉しそうにピアスを見つめる涼一を、隼人も嬉しげに眺め、腰を上げる。

「それな、あー…なんつったっけかな…。ローなんとか…とかいうガーネットなんだってさ。」
「あぁ…ローズライトガーネット?」
「あ、そんなん。さすが専門家だな。なんかそれシンプルだけど、リョウに似合いそうだったからさ。」
「へぇ…。金ないくせに。」
「うるせぇ。そこは素直に、ありがとう隼人お兄さん♪ぐらい言え。」
「ふ、ほんとに言ったらドン引きするくせに。」

そう言って顔を綻ばした涼一に、一瞬目をぱちくりとさせる。
にやりでも嘲笑でもなく、珍しく見せたその微笑みは、年相応の青年の顔をしており、思わずその頭を撫でたくなる。
いや、正確に言えば実際に撫でている。
(かーっ、可愛いなー!このっ)
がしがしと欲求のままに撫でれば、さすがに眉を寄せて抵抗してくる。

「やっ…め!手ぇどかせって!」
「ははは。あー、いいもん見た。」

満足満足、と最後に一撫でして立ち上がる。



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