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駄文
はじめてのおくりもの - 01


【はじめてのおくりもの】


軽やかなベルの音混じりに流れてくるアップテンポな音楽。
赤と緑を基調とした飾り付けに、街中をキラキラと華やかに彩る数々のイルミネーション。
甘い雰囲気のカップル達や、それを荒んだ気持ちで見やる独り身の男女などが、異様に増える季節が今年も訪れた。
色んな意味で熱気を放つそんな中、シンと冷えた夜空に白くたゆたう吐息を面白そうに眺めつつ、隼人は買い物袋片手に一人ぶらついていた。
明日に迫った、毎年恒例のクリスマスパーティーに備えて――といっても、多少豪華な食事とケーキが増えるだけで、やっていることは、いつもの飲み会とそう大差ないが――、食材の買い出しに行った帰りであった。
(意外と怜司さんも稜子さんも飲むからなー…。)
とりあえずチカに酒、多めに持ってこいって頼んでおくか、と、もはや頼みではなく命令に近いことを、去年あたりから生やし始めた髭を撫でつつ考える。
友人をパシリのように扱っても、隼人の心は痛まない。何故か。それは、チカだから、としか答えようがない。残念なことに。
そして実際、当の本人も気にしてないのだから、改善されるわけもない。むしろ喜んで使われている感も否めない。
別に隼人がエのつく俺様だとか、チカがマのつく変態だとか、ということではない。
遠慮など二人の間には必要ない。それだけである。
そんなわけで、短く『酒多めで。よろしく。』とだけ送信した後、ふと視界に入った小さな輝きに足を止める。
小さく、下手すれば素通りしてしまいそうな程、ひっそりと佇んでいるその店の窓際に、先程の輝きを見つけ、惹きつけられるように近づいていく。
(あ…これ、あいつに似合いそ…。)
いくつか並べられているアクセサリーのうちの一つ、特に目立つ物でもない、小さくシンプルな紅いピアス。
キラリと光を反射し、紅く瞬くソレを見て、年下の無愛想な青年の顔が、頭に思い浮かぶ。
銀色の髪に蒼い瞳、切れ長の目、薄い唇、と、ここ数年間ですっかり顔も体つきも大人っぽくなった涼一は、一見すると冷たいイメージをもたれやすい。
しかし、その瞳は案外豊かに感情を表すし、性格だって単に不器用なだけの真面目な少年だということを、ここ数年の付き合いで隼人は知っている。
(あれで結構、うぶで照れ屋だしな。)
くくっと、喉を鳴らす。ついこの間も隼人のちょっとした冷やかしに、やや顔を赤くして眦を吊り上げ「おっさん、そういうの世間じゃセクハラって言うんだぞ。知ってるか?」と怒っていたのが記憶に新しい。
どうも思春期というやつなのか、高校に入ったあたりから「ハヤト」ではなく「アンタ」や「てめぇ」、挙句の果てに最近では「おっさん」とも呼ぶようになり、随分可愛げがなくなってきているが。
それでも、からかうと律儀に反応してくれるあの青年は、やはり可愛く、6年前からずっと隼人のお気に入りである。


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