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駄文
良くも悪くも激動の一日 - 09

3回ほど咀嚼した後、隼人の動きが止まり、徐々に目が見開かれていく。
じっと目の前の青椒肉絲を凝視し数秒後、これだ…、と小さく言葉を零す。
その様子を眺めていた男は、不思議そうに首を傾け、どうかしましたか?と聞いてくる。
次の瞬間、ガバリと勢いよく顔を上げ、椅子から腰を上げてカウンター越しに男に詰め寄る。

「これ!青椒肉絲!これのレシピ、教えてくれませんか!」

勢いに目をぱちくりとさせた男が、ややあって、あぁ…と意味を理解し、ようやく言葉を返す。

「インターネットや本を見れば載ってますよ。」

にっこり、と優しい微笑み付きで。
いや、そうじゃなくて!と言えば、うーんと考えた挙句、あ、と閃いて

「3分間クッキングとか見るのも、手軽でいいかもしれませんね。」

見たことありませんけど、と付け足しながら、やはり笑顔で返してくる。
だぁから、違うって言ってんだろー!と、思わずその肩をガクガク揺さぶれば、あははははと笑っている。
それに隼人は、むすりと唇を尖らせ、じと目で見やる。

「あんた…わかってて、わざと言っているだろ。」
「ははは、ばれちゃったか。鋭いねぇ、キミ。」

あまりにもあっさり、かつ堂々と、悪びれもなく白状する男に、思わず口がひくりと引き攣る。
先程までの大人の男はどこへ行った。今ではニコニコと楽しげにこちらを眺めている。


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あきゅろす。
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