その他小説
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うちの姉は昔からプライドが高くて。
若き天才パティシエと呼ばれ、いろんなコンテストで入賞を繰り返しているからこそ、父の腕にも負けていない自負があったのだろう。
わざわざ勤めていたホテルに休暇願いを出してまで、我が家の一大事に戻ってきてくれたと言うのに。
もちろん父が入院のため、姉が作る事は予約の際にお断りしていて。
それでも良いと言うお話だったのだろう。
一応客商売なのだから、そうでもなければこんな風に揉めたりはしないはずだ。
実際、姉だって父の腕は認めていて。
だからこそ跡を継ぐために、武者修行と称してあちこちの有名店を渡り歩いているのだから。
そんな姉の様子を見送った高城様も、チッと小さく舌打ちをして店を出て行った。
後に残されたのは、高城家の婆やと僕。
「あーー、もしも良かったら、詳しい状況を話してもらえませんか?」
そう言って僕は、営業スマイルで話を促した。
婆やの話によると。
中1にBrightnessを結成した高城様は、ほとんど家には寄り付かなかったらしい。
たまに着替えを取りに戻ったりするぐらいで、家族とも顔を合わせない日々が続いていたそうだ。
そんな高城様が必ず家に居る日があった。
それは誕生日とクリスマス。
「えぇっ!?普通そう言う日は、恋人か友達と過ごしたりするんじゃないんですか!?」
それは平々凡々な僕ならではの、理想的な過ごし方だった。
「それが坊ちゃまは、親しい方には甘党である事を隠しているそうで……」
「はぁ、そうなんですか」
無駄に男前で不良達の羨望の対象である以上、周りのイメージを壊す様な事が出来ないらしいと婆やは嘆いた。
だからこそ、彼はお誕生日ケーキに対して特別な思い入れがあったのだろう。
そんな高城様お気に入りの父のケーキを準備できなかった婆やは。
「こんな役立たずな私は、お暇を貰って田舎に帰る事にします……」
そう言ってハンカチで目元を押さえ、よよよと泣き崩れた。
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