その他小説
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それは僕と高城様との出会いまで遡る。
あれは確か、僕が中2の頃。
僕の実家は地元でも老舗の洋菓子屋で。
パティシエである父の味に惹かれて、贔屓にして下さる家が多かった。
高城様の御宅も、そんなお得意様の1人で。
小さい頃からずっとケーキはうちで、と言うのが定番だったらしい。
なのにー…。
運が悪い事に、父が町内会の運動会でハッスルし。
優勝の明暗を分ける騎馬戦で、激しく落馬して腕と肋骨を折って入院。
ちょうどそれが高城様の誕生日の時期だったから、さぁ大変。
ある日僕が学校から帰ったら。
僕と年の離れたうちの跡継ぎの姉と、当時中3だった高城様が対峙していたのだ。
2人の間でおろおろする高城家の婆やに、止めてくれと懇願され。
「2人とも止めなよ?」
僕が恐る恐る口を挟んだのが間違いだった。
「ちょっと尚人聞いてよ!!
この私が作ったケーキを、父さんと味が違うから返品するって言うのよ!?」
「事実だからしょうがないだろう?」
「それだけなら兎も角、父と同じ味で作り直せって!!
そんな人を小馬鹿にした話ある?!」
「え?」
「もう知らない!後は尚人が相手してよ!!」
そう言って姉は怒り顔のまま、奥に引っ込んだ。
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