その他小説 42 そんな酒田の様子を見て、俺様は憮然として告げる。 「さっさとしねぇなら、もうこの話は無しだ。 この際どっちでも良いから、早く手錠を外せよ!?」 何だか俺様の方が乗り気みたいなこの雰囲気が、無性にイラつくんだが…っ。 誰が好き好んで、自分と互角な体型の男とキスしたがるんだよ!! 俺様の好みは、男女共にコンパクトな美人タイプなんだが……。 そうは言っても中肉中背で平凡顔の尚人は、その条件にかすりすらしなくて。 やっぱり恋愛は難しいとしみじみ思ってしまう。 尚人の場合は顔云々よりも、身にまとう雰囲気が柔らかくて暖かい感じがするんだよなぁ? とは言っても、決して不細工と言う訳ではないのだ。 むしろ近くで良く見たら、ちょっとした表情が可愛いと思う時だってあるぐらいで。 それとは逆に。 現時点で目の前にいる酒田の睫毛の長さやすっきりと通った鼻梁を見ると。 確かに小柄だった頃は、俺様の好みに合致しそうな雰囲気は残っていて。 本当に不本意なんだが……。 むさくるしいだけの野郎共とは違って、こうやってまじまじと至近距離で見つめても、まったくと言って良いほど嫌悪感は感じられなかった。 そう感じているのは俺様だけじゃないだろう。 多分俺様をからかうつもりで言った台詞が、予想外に受け入れられて戸惑っていたはずの酒田が。 そっと静かに唇を重ねて来たのがそれを物語っていた。 過去はどうであれ、今のコイツは女しか相手にしてねぇ。 それも本人の言う通り、相当な面食いなのは周知の事実だった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |