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その他小説
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 実際問題、平凡な僕が高城様や酒田と親しい事を快く思っていない奴は多い。

 特に高城様にはお近づきになりたくても、部下の不良達が目を光らせているから……。

 直接何かを手渡すなんてもっての外らしい。


 ちなみに僕経由で受け取るのも、うちのクラスメイトに限定されている。

 前に違うクラスの奴が僕に頼みに来た時に、酒田が笑顔でそう言う決まりだからと言って断っていたから。

 クラスメイトの分だって、彼が隣の席でしっかりチェックしているのを僕は知っている。


 そんな状況なのに。

 何故この人は、僕のお弁当は平気で口にするんだろう?

 彼らが知らないところで僕が誰かに脅されて。

 変なものを食べさせる可能性がある事は、全く考えないんだろうか?


「どうした?箸が止まったぞ?」

「あ、すみません…っ。次はタコさんウィンナーで良いですか?」


 最初の頃は、飾り切りなんて全くしてなかったのに……。


 この人が嫌いなニンジンを、型でくり貫いたら食べるとゴネたところから始まって。

 タコさん&カニさんウィンナーなんて当たり前。

 おにぎりはピカ○ュウの型抜きや、海苔でサッカーボール模様にしたもの。

 すっかりお子様弁当と進化を遂げていた。


 泣く子もだまると言われている高城様が、このお弁当を食べている姿を人に見られたら、確かに恥ずかしいだろう。

 特にタコさんウィンナーの足が口からはみ出した姿なんて、部下の不良達には絶対に見せられないに違いない。

 嘆かわしいと男泣きされるか、そんなものを食べさせた僕が裏でこっそりシメられるかどちらかだ。


 親しい友人達からは冗談で、僕が高城様の弱みを握って居るんじゃないのか?とからかわれる事があるけれど。

 どんなに考えても……弱みになるようなもので、思い浮かぶのは1つしかなかった。



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あきゅろす。
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