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その他小説
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 そして話は冒頭に戻る。


 修羅場になった割には、まったく進展しなかったバレンタインに。

 若干挫けそうになったものの、悪いことばかりではなかった。


 尚人からのチョコに同封されていたカードを見つめて、俺様は一人上機嫌だったのだ。


“今までどうもありがとうございました。
 甘いものを食べる時に浮べる高城様の幸せそうな笑みが大好きでした。
 どうぞ恋人とお幸せに!”



 たとえ色々勘違いはあったとしても。

 初めて尚人から俺様に向けられた大好きの言葉は何物にも代えられなくて。

 その一言だけで天にも昇るような気分だった。


 もともと尚人と二人きりでのんびり過ごせるだけで、幸せを満喫できる俺様は。

 ランチタイムを死守できた事と、こうやって少しでも尚人の気持ちが聞けただけで、十分満足していた。


 大体、俺様は性欲魔人と言う訳ではないから。

 簡単に足を開く奴らには嫌悪感しか生まれなかったし、今のところ尚人に対してもセックス云々といった関係を求めては居なかった。

 生まれたときから恵まれた環境の所為で何に対しても淡白な俺様は、尚人以外にここまで執着するものは1つもなくて。

 Brightnessの総長の座だって、欲しい奴が居ればいつでも譲ってやる気でいたぐらいだ。


 そう考えてみると、俺様の尚人への想いと言うのは恋愛感情ではないのかもしれない。

 独占欲はそれなりにあるが、それは友達でも多少は生まれるものじゃないのか??


 但し……ひとつだけ確かなのは。

 俺様が一方的にライバル視している酒田だけには負けたくないのだ。


 いつもお世話になっているからと、尚人の実家で販売しているチョコレート詰め合わせを3つほど受け取ったアイツに。

 たとえそれが義理で尚且つチーム宛だったとしても。
 
 尚人が作ったかもしれないチョコを食わせるのは、癪に障るのだからしょうがないだろう??


 目に見えて不機嫌になった俺様の様子を、ひとしきり竜之介にからかわれた後。

 俺様はおもむろに携帯を取り出した。


“俺様以外の特定の奴にデザート作るのは金輪際禁止だ【輝】”


 メールを見た尚人に、また子供みたいだと笑われるかもしれないが。

 嫌なもんは嫌なのだからどうしようもない。


 少し躊躇しながら送信ボタンを押して。

 そのままの体勢で不貞寝する俺様の機嫌を直せるのは、尚人からの返信以外に有り得なかったのだ。



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