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その他小説
25


 思えば2日前。

 高いプライドをかなぐり捨ててチョコレートをねだった俺様に。

 真っ赤になった尚人が了承の返事を返してくれた事で、初めて俺様の想いが通じたと実感できたのだ。


 多分それまで尚人は、俺様が想いを寄せている等といった大それた事は、これっぽっちも考えていなかったんだろう。

 そんな謙虚なところもアイツの美点の1つではあるのだが。

 その所為なのか昨日の昼休みは、付き合い始めたカップルのような少々余所余所しい雰囲気で過ごしたのだ。


 そして当日。

 過去にタラシまくっていた時に身に着けたテクニックを駆使してでも、本気で尚人を落としにかかろうと思っていた俺様とは対照的に。

 何故か尚人は少し悲しげな笑みを浮べてチョコレートを取り出した。


「あの……もう高城様には必要ないかもしれませんけど、最後に良かったら食べて下さい」


 差し出されたチョコの包みに目を奪われるよりも先に。

 尚人が告げた決別の言葉に対して、俺様は瞬時にキレた。


「尚人、テメエ…っ、どう言う意味だ!?
 俺様の意見も聞かずに勝手に最後にするんじゃねぇっ!!」


 初めて胸倉をつかみ上げて恫喝する俺様の姿に、尚人の瞳が怯えの色を浮かべるのを見て。

 チッと小さく舌打ちをして、尚人から手を離した。


 俺様はこんな風に怖がらせたい訳じゃない。

 何でいつもうまく気持ちが伝わらないんだと思い返してみれば。


「……そう言えば、まだ1度も言ってなかったな?」

「え?」


 もはやバレンタインの甘い空気も。

 暢気に飯を食う雰囲気でもない屋上に、俺様の呟きが響き渡る。


「ふん、そうやって尚人が最後にしたいと言うのなら、もう明日から昼休みにここへ来なくても結構だ」

「……っ」

「但し条件がある」


 いつもより冷たい視線を向けた俺様を見て、息を飲む尚人に。

 そのまま畳み掛ける様に俺様は宣言した。



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