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その他小説
18


 結局一度も尚人に逢えないまま、冬休みは終わって。

 この時期になると、最早悠長に構える余裕すらなくなっていた。

 
 本当は俺様から電話ぐらいかけてみようと何度も思ったのだが。

 今まで必要もないだろうと、尚人のメアドやケー番すら確認してなかったのだ。

 絶対知ってるはずの酒田に問うのも、なんだか負けた気がして癪に障るし。

 一方的にライバル視しているようで情けないのだが、俺様がそんなことも知らない事実を知られるのも悔しかった。


 仲間に当たれない以上、そうやって溜め込んだストレスのはけ口は、喧嘩か暴走と相場が決まっていて。

 しかしながら、すでに地元の大きなチームは全て制圧済で、表立って敵対する奴らがいない現状では。

 新興チームを少人数で潰すか、遠征して暴れ回るぐらいしかやる事がなくて。

 元々血の気の多い武闘派揃いのBrightnessは、気付けば冬休みの間にその勢力を大きく拡大していたのだった。


 流石にそうなれば、第一線で動き回っている俺様や酒田も無傷では居られなくて。

 新学期初日、自慢の顔や身体のあちこちに、傷やアザを作った俺達は完全に校内で浮いていた。

 教室に居るとクラスメイトが怯えるんです、と顔をしかめる酒田に心の中でこっそりザマアミロと思いながら。

 お互い見世物覚悟で始業式に出る気にもなれずに、そのままダラダラと屋上でサボっていると。


 放課後を知らせるチャイムが響き終わると同時に酒田の携帯が鳴った。


「あ〜〜、なおちゃん、終わったの??」


 その日は始業式の後、簡単にホームルームがあるだけで。

 いつも通り家まで送り届けるから、帰る前に電話するようにと伝えてあったのだろう。

 人当たりの良い甘い声で尚人と会話する酒田に俺様は殺意を覚えた。


 クソッ、コイツがクラスメイトでさえなければ尚人の護衛から迷わず外すのだがっ!!

 酒田はBrightness崩壊の時も変わらず俺様を慕ってくれた忠実な部下だが、最近は俺様の一方的な嫉妬の対象になっていた。


 俺様ほどではないが十分イケメンな部類に入る酒田を、もしも尚人が好きになったらと思うと気が気でなくて。

 こうやって仲良さそうなところを見せ付けられる度に、俺様の機嫌は急降下する一方だった。


「くぅ…っ、酒田、電話貸せッ!!」

「え、あっ、はいっ!?」
 

 ひったくる様に酒田から電話を奪い、俺様は挨拶もそこそこに尚人に告げる。


「尚人、5分以内に屋上に来いっ、俺様を待たせるなよ!?」

──えっ、高城様!?ちょ…っ、待って下さい…っ


 電話の向こうでは尚人が何かを言っていたが。

 俺様は相手の返事も待たずにブチッと電源を切って、酒田に携帯を放り投げた。



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あきゅろす。
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