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その他小説
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 そんな感じで、大した変化のないまま数ヶ月が過ぎた頃。

 お子様扱いされるのは意外と便利だと俺様は気付いた。


 わざと不機嫌そうな顔で食べさせろと言ったり。

 機嫌を直す代わりにと膝枕をせがんでみても、大抵はしょうがないで済まされるのだ。

 調子に乗って食後の昼寝の際に、人の温もりがないと眠れないからと言って抱き寄せた時は、他をあたれと真顔で言われてしまったのだが。


 その頃には流石の俺様も、尚人への恋心は自覚せざるを得なかった。

 だからと言って人一倍高いプライドをかなぐり捨てて告白したところで、平凡顔の尚人にあっさり断られた日には。

 逆上して無理やり力づくで手に入れてしまいそうな確信めいた予感があって。

 そんな事をして今までの関係を壊すぐらいなら、少しでも尚人が俺様に恋愛感情を抱くように仕向ける方が無難だと自重した。


 まず手始めに考えたのは、クリスマスイブの予定で。

 恋人のように二人っきりで過ごそうと、勝手に計画した俺様だったが。

 話を切り出す機会をうかがいつつ、何気ないフリで予定を聞き出そうとした俺様の気も知らずに。

 店の手伝いで寝不足気味だという尚人に、クリスマス前の1週間は1年で1番忙しいとぼやかれてしまえば、流石に何も言えなくなってしまった。


 そうでなくても尚人は冬休みに入ると、普段は夕方だけの店番が終日になってしまうのだ。

 平凡な顔立ちの癖に人当たりの良い尚人は、ご近所でも評判の看板息子で。

 尚人の営業スマイルを前にして買いに来たババア共の財布の紐が緩むとか、どうせそんなクダラナイ理由なんだろう。


 流石に正月は洋菓子屋も休みだろうが……。

 年末年始のカウントダウンは、例年Brightnessの奴らと一緒に迎えるのが定番になっていたし。

 普段好き勝手やっている俺様も、親戚達が集う三箇日だけは自宅に足止めを食らうのだ。

 普段なら大喜びで迎えるはずの長期休暇も、尚人の姿を見かける事すら困難になるかと思うと憂鬱なものでしかなかった。 


 顔を見るだけならバイト中に尋ねて行けば良い話なのだが……。

 天敵である尚人の姉に出くわす可能性がある以上、あそこには近づかないと決めていた。

 あの女はすでに一人暮らしをしているにも関わらず、暇があるとは実家に戻って店番中の尚人に愚痴るらしい。
 

 更にムカつく事に、俺の話を聞いて興味を持った酒田が。

 わざわざ姉が在宅中に偶然を装って遊びに行ったところ、すっかり気に入られたそうだ。

 良いお姉さんでしたよ?と首を傾げるアイツを、殺したいほど憎いと思ったのはその時が初めてだった。



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