その他小説
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流石にそんな風に誤解されている中で、声なんてかけられるはずもなく。
周りで監視している奴らが早く諦めてくれないかと心の中で祈りながら、遠巻きに尚人の姿を伺うのが日課となってしまっていた。
今となってみては、当時の俺様がどうしてそこまで固執したのかわからないが……。
困難が多ければ多いほど、逆に燃えてしまう負けず嫌いの性だと思いたい。
最初の時点では、レストランで満足した時にオーナーシェフに礼を言うのと同じような感覚だったのだ。
それもあのケーキは、俺様の為だけに特別に作った尚人にとって初めての作品で。
プロじゃないから御代は受け取らないという謙虚さにも好感が持てた。
それなら味わった感想ぐらい言うのが、当然の礼儀だと思ったまでなのに。
しかし、周りからその執着は愛だ恋だと決め付けられると、だんだんそうなのか……??と洗脳されてくるから恐ろしい。
監視の所為で話しかけられないイライラが、尚人と笑い合っている友人達への嫉妬にも似た感情へと変わっていった事が、混乱に拍車を掛ける結果となった。
当時の俺様は恋愛に対しては淡白な方で。
特別な恋人など持たなくても事足りていたし、ましてや誰かに対して嫉妬する日がくるなんて考えた事もなかったのだ。
それも追いかけている相手はごく平凡な容姿の少年で。
一目惚れなんて絶対有り得ないし、ましてや直接関わったのはほんの一瞬で。
いったい好きになる要素がどこにあるのか、俺様の方が説明して欲しいぐらいだった。
更に納得できないのは。
相手がまったく俺様を意識していないこの状況は、世間で言うところの片思いと言う症状で……。
「有り得ん…っ、よりにもよってあんな平凡に……?」
本当だったら屈辱過ぎる…っ。
イライラが募れば募るほど、俺様のプライドが堪えられなくなっていく。
相手が絶世の美女や深窓の令嬢だったとしても、俺様が一方通行の恋をするなんて許しがたいと言うのに。
もはや礼なんてどうでも良かった。
結局誕生日から2週間が経過したところで、俺様の待ち伏せ生活は終わりを迎えた。
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