その他小説
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いつまでも子供じゃないんだから、誕生日にケーキが食えなかったぐらいでぐだぐだ言う気もないのに。
間に合わなかった事で、あからさまに肩を落とした婆やに対して。
その時の俺様は、重くなった空気を払拭しようと普段以上に饒舌になっていた。
「ふぅん、見た目は悪くない……それでコレは誰が作ったんだ??」
「いつものパティシエのご子息様です。確か尚人様と……」
「へぇ……あのいけ好かない女の弟か。
子供の癖に、技術だけは凄いようだな?」
当時の尚人は、まだ髪も黒くて身体も小さかったから……。
帰ってきたばかりの学ラン姿でなければ、小学生と言っても通用したと思うのだ。
流石にロウソクは必要ないと固辞し、さっさとカットしろとぶっきらぼうに告げた俺様に。
婆やは嬉しそうに切り分けながら、あれからの出来事を話し始めた。
「──なんでもお独りで作ったのは初めてだそうですよ?
“もちろん味は保障しますけど、プロではないので御代は戴けません。
僕から輝様への誕生日プレゼントだと思って受け取って下さい”だなんて……。
そう言って、はにかんだ顔は本当にお可愛らしくて」
「へぇ……?」
すっかり尚人ファンになったと言う婆やの台詞をBGM代わりに、俺様は4分の1にカットされたケーキを口にした。
正直あんな子供の保障なんて期待していなかったと言うのに。
お世辞でもなんでもなく、尚人の処女作のケーキは美味かったのだ。
一人で食べるのはなんとなく惜しくて、俺様は婆やにも一口食うように勧めた。
その味について聞かれても言葉で伝えるよりも確実だし、何より俺様と驚きを共有する人間が欲しかったのだ。
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