その他小説
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はぁ…っ、ランチデートねぇ?
実情はそんなに甘いもんじゃねぇんだが。
竜之介の言う平凡こと牧野 尚人【まきの なおと】は、確かに見た目は個性なんてものは1つもない。
これが逆に不細工だったり、身だしなみに気を使わないタイプだったら悪目立ちするんだろうが……。
良くも悪くも際立つもののないあっさりとした顔立ち。
ほんのり茶髪でどこにでも居そうな髪型。
流行にもそれなりに敏感らしくて、制服のないうちの学校じゃ同じような服装の奴らはゴロゴロ居る。
尚人の顔を完全に覚えていた俺様だって、同じ学校に通っている事に半年近く気付かなかったぐらいなのだ。
尚人と最悪な出会いをした2年半前。
俺様は俗に言う反抗期真っ盛りで、今以上に荒れていて。
目が合ったといっては殴り、肩があたったと言っては慰謝料をふんだくる。
かといって、別段喧嘩相手や金に困っていた訳ではない。
当時の俺様に足りてなかったのは、カルシウムと……甘いもの。
おかげで慢性的にイライラが募っていて。
あの日も婆やの制止も無視して、クレーマーの如く尚人の自宅に乗り込んだのだが……。
そこで待ち構えていたのは、俺様に匹敵する自信家の女だった。
出会った瞬間、絶対に相容れないと互いに思ったのだろう。
そこからは壮絶な舌戦が開始して、売り言葉に買い言葉状態で引くに引けない空気の中。
「2人とも止めなよ?」
少々怯えを含んでいたものの、あの状態の俺達に声を掛けた度胸だけは認めてやっても良いだろう。
案の定、女の矛先は尚人に向かっていった。
キィキィとまくし立てる女の台詞で、二人が姉弟だと知る。
言いたい事だけを告げて、嵐のように去って行く姉の後姿を。
困ったような笑みを浮かべて見送る尚人の第一印象は。
“まったく似てねぇ……”の一言だった──。
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