飼い主の条件
13
「もう一度聞く。何で俺の名前知ってるの?」
「ヒジリ……?」
「そう、それ。俺の名前……さっきは苗字しか言ってないよね??」
そう俺が告げるとマールは押し黙った。
やっぱり何か目的があって俺に近付いたのか!?
しかし出会ったのは偶然と言うか、俺が寝ているマールを起こしたと言うか……。
あの猫の後をついて行かなかったら、絶対こんな場所でマールと出会う事はなかった。
まさか最初から仕組まれていたなんて有り得ないしなぁ?
猫に道案内させる事すら、常識では考えられないのに。
命令した方があんな風に寝こけてるなんて事、絶対ないよな?
「答えられないのなら、可哀想だけど警察に引き渡すしかないな?」
「…ッ、ケーサツ……?」
警察の言葉にマールはびくりと反応した。
「そうだよ、不法侵入者が居るから連れて行ってくださいって」
「フホーシンヌゥーサ?」
「……違うの?」
「チガ…ウノ……ハ、ワカル」
不法侵入者違うのはわかる……不法侵入者じゃないって意味か?
日本語を上手く話せないマールの台詞は理解するのも一苦労だ。
俺はため息混じりに質問を続ける。
「ふぅ…。不法侵入じゃないって言うのなら、何が目的なの?一体何がしたいの?」
「キス、シタイ……」
そう言ってマールは熱い視線を俺に向けてくる。
はぁ…っ、コレってどう考えても話逸らそうとしてるよな?
それ以前に。
不意打ちでもなければ、ここまで不審な奴とキスなんて出来るかーーっ!!
俺は心の中で絶叫した──。
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