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飼い主の条件
12
 
 まともに日本語を操れないのを知っていながら、俺は少年の体を前後に揺さぶって問いただした。

 荒っぽいのは自分でもわかっているが……。

 言葉が通じないなら、怒りを表現するにはボディトークに訴えるしかしないのだ。


「ィ…タイォ、ユルチ…テ、ヒジリ…ッ!!」


 半泣きになりながら少年は……下手くそな日本語を使って必死で叫ぶ。

 やっぱり少しは話せるんじゃないか、と思うよりも早く俺は動きを止めた。


 ヒジリ…って。

 何でこいつが俺の名前を知ってるんだ!?

 さっきは苗字しか名乗ってないし、少年のこの様子じゃ絶対ここの生徒じゃないだろう。

 不審気に少年を見つめれば、嬉しそうな笑顔でもう一度抱きつこうと腕を伸ばして来た。


 いやいや、懐くなっ!

 無意識でこちらに伸ばされた手を振り払う。

 何者かわからない奴とキスしたのは、確かに俺のミスだが……。


「お前一体何者なんだ?何で……俺の名前知ってるんだよ?」

「ゥ゙ーー?マール…マール・ブラッド…ユィマ、シタ?」


 俺の台詞が上手く聞き取れなかったのか、少し考えてから少年はそう告げた。

 えっと、こいつはマール・ブラッドって名前なのか?

 ユィマ、シタって……言いました、だよな?

 何で過去形な上に疑問形なんだ?


 俺はもう一度……今度は出来る限りゆっくりと聞き取りやすいように問いかける。


「お前マールって名前なのか?」


 俺の言葉が理解出来たのが嬉しかったのか、少年=マールは首が取れそうな勢いで頭を上下に振った。

 おいおい、急にそんなに振ったら脳震盪(のうしんとう)起こすぞ!?



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あきゅろす。
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