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飼い主の条件
2

 暫く無言で見つめ合っていたが、先に向こうが折れた。


 僕を安心させようとしているのか、優しげな笑みを浮かべた顔で……。

 色々と話しかけられたものの、彼が何を言っているのか全く理解出来なかった。


 少しだけ、血とまでは言わないから体液を分けて欲しいなぁ……?と思いつつ、じっと見つめ続けていたのだが。

 何も言わない僕に業を煮やしたのか、彼は急に話すのをやめて考え込みだした。


 考えがまとまったのか彼は徐(おもむろ)に顔を上げ、にっこり僕に笑いかけてすぐ傍まで近づいて来る。

 そして僕の目の前においしそうな手を差し伸べてきた時、とうとう空腹感に我慢できなくて僕のお腹が鳴った。

 今すぐにでもその腕に噛り付きたい……けど、そんな事したら変質者だと思われるーーっ!!!


 焦る僕の顔を見て、彼は急に何かを思い出したかの様にポケットを漁り出した。

 そして取り出したのは──。


 それは透明なビニールに包まれた、ピンクと白の手のひらサイズの丸いものだった。

 ……紙粘土?


「お腹が空いてるのなら、食べて良いよ?」

「………」


 何かを言って彼はそれを手渡そうとしたが、見たことのない物体に僕は受け取りを躊躇する。


「もしかして饅頭見たことないのか……?」

「………」

「弱ったなぁ……?」


 少し考えた後、彼は2つの丸い物体のピンク色の方のビニールをはがし指で半分に割った。

 そのうちの1つを僕の手に乗せ、1つを彼が口にした。

 きっとこれが食べられる物だという、彼なりのパフォーマンスなんだろう。

 僕も一連の動作を見て、ピンクの甘い匂いのする──中には黒い泥の様な塊が入っていた──ものを口の中に入れてみた。



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