飼い主の条件
用事の後は
「いつもご苦労様、生徒会って言うのもホント大変だねぇ?」
そう言いながらにっこり微笑むのは、裏門の守衛の一人である斎木さんだ。
この人が件の会長の中等部時代からの想い人で。
5年もの間、ずっと片思いしている相手だと知ったのはつい最近の事だ。
どうしてそんな流れになったのかは、よく覚えてはいないのだが。
会議後のお茶会の席で、生徒会役員の初恋話を聞かされたのだ。
今の会長に下手に可愛いだなんて言ったら、さっくりと刺されそうだが……。
中等部に進学したばかりの頃は、それはもうあどけなくて天使の様だったと、会長の腰巾着の副会長がうっとりした顔でのたまっていた。
もちろん副会長の初恋は会長だったらしい。
頭痛すぎだぞ、あんたら。
もちろん周りからもそう言う対象に見られていたらしくて。
上級生に人気のない所に連れ込まれて強姦されそうになっていた時、偶然通りかかった斎木さんに助けてもらったそうだ。
その時の格好良さと言ったらどんなアクション俳優よりも素敵だったと、一瞬恋する乙女の顔になった会長に俺は眩暈を覚えた。
おいおい、今のアンタはどう見ても男以外の何者でもないから……。
見てるこっちが気持ち悪いから、そんな顔しないでくれっ!?
そう思いながらも立場上、そんな暴言を口に出す訳にもいかずに。
半強制的に会長の初恋話を聞かされる俺の身にもなれよ。
こうやって改めて眺めてみても。
優しげなスポーツマンといった雰囲気の斎木さんが、一見して武道の達人だと判るものは少ないだろう。
それ以前に裏門に用事のある人自体が少ないので、斎木さんの存在を知る者は極稀だった。
「どちらかと言うと、仕事よりもそこに所属している人達の相手が大変なんですけどね……」
ため息をつきながらそう言った俺に、斎木さんは少し同情の目を向けて。
「ん〜、八重樫君も悪い子じゃないんだけどねぇ?
確かにちょっと変わってるのは俺も認めるけど……」
簡単に認めてやるなよ……。
長年の想い人に変人だと思われている会長に、ほんの少しだけ同情した。
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