青蓮SideStory
12
それから寺の境内だと思われる舗装もされていない山道を歩く事3分。
マイナーな山寺だと言うのに、すれ違う参拝者が意外と多い事実に俺は首を傾げる。
改めて思い返してみれば、駐車場も妙に混雑していたような?
まさか全員が全員、わざわざ滝修行に来た行者ご一行様だとも思えない。
紅葉のシーズンだとは言え、こんな穴場にそこまで人が集まるだろうか??
どうみてもこんな寂れた寺に似つかわしくない軽装の若者が多いのが、俺の疑惑の決定打となった。
はぁ…っ、まだ何か企んでいるな……?
そう気付いても、あえて黙って着いていく事にした。
何故なら理由は簡単。
ターゲットが俺ではなく、相川にロックオンされているのが目に見えてわかるから、だ。
謀(はかりごと)をめぐらす時の智史は上機嫌そのもので。
自分が被害者でさえなければ、この先の展開を楽しむのも悪くはない。
基本的に智史が陥れる相手は、気に入っている奴らに限定されていて。
本人曰く、愛情の裏返しの可愛い悪戯は、マンネリ化する学園生活のささやかなスパイスだとほざいていた。
たまに想定外の出来事の連続で、ターゲットが本気で酷い目に遭う可能性はゼロではないが。
そんな時は途中で計画を中止してフォローに回るのもわかっているから、安心して傍観者になれるのだ。
珍しく心の底から楽しそうな笑みを浮べる智史を筆頭に。
期待でわくわくしてます!!と顔に書いた相川と。
その2人を見比べ、一抹の不安を隠し切れずに引き攣った表情の佐藤と。
そんな3人から一歩離れた位置で、澄ました顔して引率する俺の姿は、どうやら人目を引くようで。
すれ違う奴らがかなりの確率で振り返るのが、内心おかしくてしょうがなかった。
俺達の姿は、他人の目からは一体どう映るのだろうか?
場違いな雰囲気を醸し出す3人組を道案内する僧侶……?と想像したところで、自分がいつもとかけ離れた格好なのを思い出した。
雪駄に作務衣姿の普段着なら兎も角。
剃髪を帽子で隠し智史にコーディネートされた俺は、一見普通の社会人にしか見えないだろう。
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