青蓮学園物語
2
そうこうしているうちに僕達は第一体育館へ到着した。
出入り口付近で生徒達がごった返す中、時計を確認すると。
どうやら後1分少々で生徒総会が始まるらしい。
体育館の中に入ったところで、智兄が再度振り返って声を掛けてきた。
「俺も退任の挨拶で壇上に上がらないといけないから、ステージ袖の控え室に行くけど。
佐藤達に何か伝言あるなら引き受けるぞ?」
『はぁ…っ?時間大丈夫だったのか!?』
「最初から呼び出しで遅れると駆に伝えているから平気だろ?
何もないみたいだから、もう行くけど……」
智兄はそこで言葉を止めて、僕に心配そうな目線を送ってきた。
「さっきの蓮見先生の呼び出しの件は、あまり気にしない方がいいぞ?
何かあれば俺も相談に乗るから、な?」
『え…っ、智兄?』
ふわりと頭を撫でられ、僕は驚いて智兄を伺う。
なっ、なんで急に、対雅史仕様のブラコンモード発動中みたいになってるんだよーー!?
今までほとんど向けられたことのない、身内限定の大切なものを慈しむ様なその表情に僕は絶句した。
多分、僕が想像するに。
僕達が共に行動している理由を邪推されないように、こうやって口にする事で周りに知らしめているだけで。
出来の悪い弟分を慮る優しい幼馴染を演出した結果なんだろう。
だからといって今更智兄に合わせて演技しようにも。
僕がここでいきなり甘えでもしたら、途中から目にした人には一見ラブラブな恋人達だと思われちゃうよ??
それは結果として、翔太と智兄両方と付き合っているという不名誉な噂を肯定する事に他ならないのだ。
反応に戸惑ったまま、結果的に数十秒間見つめ合った形になった僕達は。
周囲の生徒達の遠慮のない視線の餌食となっていて。
あぁ、また僕の知らないところで噂が蔓延るんだろうなぁ……と、諦め半分に思っていると。
生徒総会の開始を意味する始業のチャイムが、体育館内にも鳴り響いた。
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